AISAS(アイサス)とは?活用の具体例やAIDMAとの違いをわかりやすく解説
AISAS(アイサス)とは、マーケティング理論の1つで、ある商品やサービスを買うまでの間に、消費者がどのような購買行動をとるのかをパターン化したモデルです。インターネットでの消費者の購買行動を理解するフレームワークとして、広く利用されています。
本記事では、AISASの概要や具体的な活用方法、メリット・デメリットを解説します。
なお、ナイルでは、累計2,000社以上のウェブマーケティング支援で培ったノウハウを無料で公開中です。AISASなどのモデルと併せて、自社独自のウェブマーケティング手法を構築したい方は、ぜひご覧ください。
目次
AISASとは
上述のとおり、AISAS(アイサス)とは、消費者の購買プロセスを説明するモデルの1つです。Attention(注意)、Interest(関心)、Search(検索)、Action(購買)、Share(情報共有)の5つで構成され、消費者がインターネットで商品やサービスの情報を調べながら購入を行い、その結果をシェアするまでの一連の流れを示しています。(各要素の意味は後述します。詳しく知りたい方はこちら)
AIDMAとAISASの違い
AISASと似た言葉にAIDMA(アイドマ)があります。どちらも消費者の購買プロセスを説明するモデルですが、以下の違いがあります。
ステップ | 概要 | |
---|---|---|
AIDMA |
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売り手側の情報発信を受けて、買い手側が購入に至るまでのプロセスを説明している。1920年代に作られた。 |
AISAS |
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買い手側がインターネットで情報収集しつつ購入し、それの結果をシェアするプロセスまでを説明している。2004年に株式会社電通が提唱。 |
AIDMAが、売り手側の情報によって商品購入へと向かわせる単一方向的なモデルであるのに対し、AISASは買い手側が能動的に検索して情報を調べて購入する、双方向性の強いモデルになっているのが特徴です。
なお、AIDMAの詳細はこちらの記事で詳しく説明しています。
なぜAIDMAからAISASに変化したのか?
AIDMAがAISASへと購買プロセスが変化した背景には、インターネットの普及があります。
インターネットの普及は、消費者がオンライン上で情報を検索して調べたり、誰かと意見交換したりすることを可能にしました。その結果、企業が発信する情報だけではなく、消費者側が発信するレビューやコメント情報も参考に、商品やサービスが購買されるようになりました。これがAIDMAからAISASへと購買プロセスが変化した主な理由です。
実際に、皆さんも家電製品など高価な商品やサービスを買う際、失敗を避けるためにウェブで情報を詳細に調べてから購入する方が多いのではないでしょうか。この検索してから購入するプロセスが、まさしくAISASモデルなのです。
なお、AIDMAとAISASについては、ナイルTVでも詳しく説明しています。ぜひご覧ください。
AISASの具体的な5つの行動
ここからはAISASを構成する5つの行動について説明します。わかりやすいように、洋服レンタルサービスのマーケティングを行っていると仮定して、それぞれ見ていきましょう。
Attention(注意)
Attentionとは消費者が商品やサービスを認知する段階です。
どれほど優れた洋服レンタルサービスを提供していても、そもそも消費者がサービスを認知しなければ利用はされません。そこで企業側はウェブ広やブログ、SNSキャンペーンなどの施策を行い、消費者はそれを見てサービスを認知するわけです。
Interest(関心)
Interestは、消費者が会社の商品やサービスに興味を持つ段階です。
このステップに入った消費者は、Attentionでの認知から一歩進み、より深く商品やサービスの情報を探し求めるようになります。
洋服レンタルサービスなら、広告や記事を読んだ消費者が「送料無料」「交換自由」などの特徴を知って「これはいいな」「使ってみたいな」とサービスへの興味関心を深めた状態です。
Search(検索)
Searchは、消費者がウェブ検索で積極的にサービスの情報を収集する段階です。
興味を持った商品やサービスについて、より詳細な情報を得るために、Google検索やSNSなどでリサーチします。
具体的には、洋服レンタルサービスに関心を持った消費者が、GoogleやX(旧Twitter)で「洋服レンタル おすすめ」で検索して類似サービスを探したり、口コミ・評判を調べたりするイメージです。検索の結果、ほかに気になるサービスがなく、かつ悪い評判が見当たらなければ、消費者は安心して次のActionフェーズに移行します。
Action(行動)
Actionは、実際に消費者が商品やサービスを購入する段階です。
消費者は、これまでに調べた商品やサービスの内容と併せて「決済方法」や「納品方法」などの細かな点を確認し、納得すれば購入に至ります。洋服レンタルサービスで言うと「利用条件も納得できたし、試しに使ってみよう」と決心する状態です。
Actionの敷居を下げて利用しやすくするため、企業側から「初月無料」などのオファーを行う場合もあります。
Share(情報共有)
最後のShareは、商品やサービスを購買した後の動きです。消費者が商品やサービスを実際に使用した後、その体験や感想を誰かに共有するフェーズを指しています。
例えば、洋服レンタルサービスを実際に利用してみてどうだったのか、評価や感想をSNSやブログなどで紹介する行動がShareです。好意的なレビューは、ほかの潜在的な顧客がサービスを利用する判断材料となり、新たな顧客獲得につながる可能性が高まります。
AISASの具体的な活用方法
AISASを活用すると、コンバージョンの獲得に向けて、どのようなコミュニケーションを消費者と行うべきかを整理して考えることができます。下の表は、あるBtoBサービスにおけるマーケティング施策をAISASに沿って整理したものです。
項目 | Attention | Interest | Search | Action | Share |
---|---|---|---|---|---|
顧客の行動 | サービスを認知する | サービスに興味を持つ | 検索をしてサービスを調べる | サービスを購入する | 満足し、SNSでシェアする |
必要な施策 | 認知の獲得 | 情報の提供 | コンテンツ提供 | 購買支援 | シェアの推進 |
具体的な施策例 (BtoBの場合) |
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このようにマーケティングの全体像を整理しておくと、例えばAttentionやInterestに課題がある場合、「広告やSEO、LPやコーポレートサイト内でのサービス説明を行えば、認知や興味の獲得を目指すせそうだ」とスムーズに検討ができます。
もし既にAISASモデルを導入しているが課題や悩みがある、マーケティング施策の検討で失敗したくないとお考えでしたら、以下のバナーよりお気軽にナイルまでご相談ください。
AISASを活用してマーケティング施策を進める2つのメリット
では、AISASを活用してマーケティング施策を進めると、どのようなメリットがあるのでしょうか。以下、2つの観点を紹介します。
AISASでマーケティング施策を進める2つのメリット
メリット1 広告費を抑えられる
AISASモデルに沿ってShareを推進すると、広告費の削減が期待できます。良い口コミ・評判が拡散されることで、広告などで露出を増やさなくても、自然に顧客が集まってくるようになるからです。
こうした情報の共有や拡散で集客する手法は、バイラルマーケティングとも呼ばれます。詳しくはこちらの記事をご確認ください。
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メリット2 BtoC・BtoBどちらでも汎用的に活用できる
AISASモデルは、BtoCだけではなく、BtoB用途にも活用可能です。BtoBでも口コミや評判は有効で、例えば企業の導入事例や成功事例を紹介して、SearchやActionのニーズに対応することで新規顧客の獲得につながります。
なお、BtoBとBtoCのマーケティングの違いをこちらの記事で紹介しています。併せてご参照ください。
AISASを活用してマーケティング施策を進める2つのデメリット
AISASに沿ったマーケティングモデルを進める場合に注意したいデメリットもあります。以下の順に2つ紹介します。
AISASでマーケティング施策を進めるの2つのデメリット
デメリット1 ネガティブな口コミや評判のリスクがある
AISASに沿ってShareを推進すると、ネガティブな口コミや評判が寄せられる場合があります。不満足な意見が拡散すれば、企業やサービスの評判に悪影響を与えてしまいかねません。AISASを取り入れる場合は、このリスクを前提に検討することをおすすめします。
なお、予防策としては、ネガティブな意見への先回りが有効です。例えば洋服レンタルサービスで言えば「パーティや式典の用途には向かない」「汚れがあった場合はすぐに交換できる」といった問題点をフォローするコンテンツを発信し、正しい理解や解決策を提供するイメージです。こうすることで商品やサービスに関する誤解を解消し、ネガティブな口コミを抑えられます。
デメリット2 AISASに適さない商品やサービスがある
AISASはすべての商品やサービスに利用できるわけではありません。例えば、特徴が少なく比較が難しい日用品や、安価で購入リスクの少ない商品では当てはまらない可能性があります。AISASを利用する前に「検索して調べてから購入するか」などの観点でサービスを確認するようにしましょう。
AISASはもう古い?次の購買行動モデル
購買行動モデルには、AIDMAやAISAS以外にも「SIPS」や「AISCES」「ULSSAS」「DECAX」など、いろいろなモデルがあります。AISAS以後に生まれたものも多いため「AISASはもう古い」「より新しいものが知りたい」と感じている方もいるのではないでしょうか。
そこでここからは、AISAS以後に登場した「DECAX」モデルと、最近の消費スタイルの1つである「パルス型商品」についてピックアップして紹介します。
AISAS以外のモデルも把握し、状況に応じて使い分けることで、より効果的なマーケティング施策を考えやすくなります。
DECAX(デキャックス)
DECAXは、AISASを提唱した電通が2015年に発表した、コンテンツマーケティング時代における購買行動モデルです。DECAXは、Discovery(発見)→ Engage(関係構築)→ Check(確認)→ Action(購買)→ Experience(体験/共有)の5つのプロセスで構成されています。
例えば、洋服レンタルサービスの場合、まずニュースやSNSなどを見て、消費者はサービスを「発見(Discovery)」します。次に、実際にどのような服がレンタルできるかなどを記事や動画などのコンテンツで調べて「エンゲージメント」を高めます(Engage)。そして期待するサービスかどうかを、企業サイトなどで確認(Check)して、購入・利用してからSNSやブログで共有する(Action、Experience)という流れです。
このように、DECAXでは、顧客側がコンテンツを通じてサービスへのエンゲージメントを高めていくのが特徴です。現代はGoogleなどの検索以外にも、SNSや動画サイトなど、さまざまなチャネルでコンテンツと接することができます。そのため、あらゆるチャネルで消費者のニーズに沿った高品質なコンテンツを提供し、消費者のエンゲージメントを獲得できるかがDECAXモデルでは重要です。
パルス型消費
もう1つ、現代の購入プロセスを把握する上で押さえておきたいのがパルス型消費です。
パルス型消費とは、主にウェブサイトの閲覧中、突然に購買意欲を感じてすぐに購入に至る行動パターンのことです。AISASやDECAXのようなステップ形式のモデルではありませんが、同じように現代の消費者の購買行動を表す言葉として、主にBtoCの文脈でよく用いられています。
パルス型消費は、特に明確な理由なく、一時的な衝動や直感にもとづいて購入されるのが特徴です。購入決定には、以下の6つの「直感センサー」が影響していると言われます。
直感センサー | 内容 |
---|---|
Safety(セーフティ) | 「より安心安全なもの」に反応する |
For Me(フォーミー) | 「より自分にぴったりだと思うもの」に反応する |
Cost Save(コストセーブ) | 「お得なもの」に反応する |
Follow(フォロー) | 「売れているもの」や「第三者が推奨するもの」に反応する |
Adventure(アドベンチャー) | 「知らなかったもの」や「興味をそそるもの」に反応する |
Power Save(パワーセーブ) | 「買い物の労力を減らせること」に反応する |
パルス型消費は、特にSNSを経由したネットショッピングでよく見られ、例えばライブコマースや、YouTubeやInstagramでの商品紹介を見て即購入するようなケースが多くあります。そのため、これらのチャネルと相性の良いファッションや美容製品、雑貨、小型電子製品などで良く見られます。
ウェブマーケティングのお悩みはナイルまでご相談ください
この記事では、AISASの概要から活用方法まで詳しく紹介しました。
現在はAISAS以外にも、DECAXなどいろいろなモデルが登場しています。それぞれに特徴がありますので、自社の商材や消費者のニーズに合わせて適切なモデルを選択しましょう。こうすることで、よりウェブマーケティングの精度を高めることが可能です。
なお、ナイルでは、累計2,000社以上のウェブマーケティング支援で培ったノウハウを無料で公開中です。AISASなどのモデルと併せて、自社独自のウェブマーケティング手法を構築したい方は、ぜひご覧ください。
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