検索エンジンがコンテンツを評価する上で、今注目されているのが「エンティティ」です。
エンティティとは、人物や企業、製品などの“意味のある固有の存在”を指し、検索エンジンはエンティティ単位で情報の信頼性や関連性を判断しはじめています。
そのため、SEOでは「誰が何を発信しているのか」を正しく伝えることがこれまで以上に重要です。
そこで、SEOにおけるエンティティの役割や技術的な背景、エンティティを高めるための具体的な対策などについて、詳しく解説します。
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目次
SEOにおけるエンティティの重要性
「エンティティ(Entity)」とは、直訳すると「実体」や「存在」という意味を持つ言葉です。
SEOの文脈では、人物、場所、企業、商品、概念、出来事など、明確に意味を持つ“モノやコト”を指します。
例えば、「トヨタ」「富士山」「iPhone」「東京オリンピック」といった具体的な名称は、すべてエンティティと見なされるものです。
中でも、「トヨタ」という単語は、自動車メーカーの企業を指すこともあれば、愛知県の豊田市を指すこともありますが、それぞれが別のエンティティとして認識されます。
Googleは、よりユーザーの検索意図に合った情報を提供するため、こうしたエンティティ単位での理解を強化しています。
従来のようなキーワードの一致だけではなく、エンティティ単位で「その言葉が何を指しているのか」「どんな文脈で使われているのか」を把握し、Webページを分析・評価するようになりました。
つまり今のSEOでは、「どのキーワードを入れるか」だけでなく、「どんなエンティティとして認識されるか」「そのエンティティがどんな関係性を持つか」といった視点が非常に重要になっているのです。
エンティティを理解する技術の進歩
検索エンジンのエンティティ理解が進んでいる背景には、3つの技術的な進化があります。
これらの技術によってユーザーの意図をより深く理解し、関連性の高いエンティティを含むページを上位に表示する傾向が強まっています。
ナレッジグラフ
2012年に導入されたナレッジグラフは、エンティティ同士の関係性をデータベース化し、「誰が誰と関係しているか」「ある場所はどこに存在するか」といった情報を体系的に整理する仕組みです。
例えば、「清水寺」と検索すると、単に「清水寺」というキーワードが含まれたページを表示するのではなく、清水寺という宗教建造物エンティティに関連する情報(所在地、宗派、歴史、拝観時間、周辺の観光スポットなど)を構造化して提供します。
BERT
自然言語処理の精度を高めたBERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)は2019年にGoogleが導入。
文脈を双方向から理解する能力を持ち、同じ単語でも前後の文脈によって意味が変わることを正確に判断できます。
例えば、「マツダ 新型」という検索に対して、松田という人名に関する情報ではなく、自動車を製造するマツダ株式会社の新型車情報を提供することができるなど、検索クエリに含まれる各単語の意味を、その文脈に応じて適切に解釈。
こうして、ユーザーが本当に求めている情報を特定できるようになりました。
MUM
2021年に発表されたMUM(Multitask Unified Model)は、BERTの1,000倍の能力を持つとされる言語モデルで、複数のエンティティが関連する複雑な検索意図を理解し、必要な情報を統合して提供できます。
例えば、「富士山に登る際の装備」という検索に対して、富士山という地理的エンティティ、登山という活動エンティティ、装備という物理的エンティティを組み合わせて、最適な情報を表示することが可能になりました。
エンティティがSEOに与える具体的な影響
検索エンジンがエンティティを理解する精度を高めたことで、検索結果や評価軸にも大きな変化が生まれています。
<エンティティがSEOに与える具体的な影響>
検索意図の理解がより文脈的に
従来のSEOでは、ユーザーが入力したキーワードそのものの一致が重視されていました。
しかし、BERTやMUMといった技術の発展により、Googleは検索クエリの背景にある「意図」をより深く理解できるようになっています。
従来のキーワードマッチングでは、「東京 レストラン おすすめ」という検索に対して、これらの単語が含まれるページを表示していました。
しかし、現在は東京という地理的エンティティ、レストランという業種エンティティ、おすすめという評価エンティティの関係性を理解し、実際に東京でおすすめのレストランを紹介するページを優先的に表示するようになっています。
つまり、単なるキーワードの羅列ではなく、検索意図に合致した文脈的なコンテンツが評価されるようになってきているのです。
ナレッジパネルやAI Overviews(AIによる概要)への関与
エンティティが正確に認識されることで、Googleの検索結果画面に表示される「ナレッジパネル」や「AI Overviews(AIによる概要)」に情報が掲載される可能性が高まります。
ナレッジパネルは、検索結果画面の右側に表示される情報ボックスで、そのエンティティを正しく把握し、その関連情報(リンゴなら特徴や栄養成分表)を整理しているからこそ表示されるものです。
一方、AI Overviews(AIによる概要)では、検索クエリに対して複数の情報源から生成された要約を回答として提示するため、どのエンティティが信頼に値するか、どのサイトが適切な情報を持っているかが重要視されます。
つまり、自社や自メディアがエンティティとして正しく認識されていなければ、こうした新しい検索機能で露出することは難しくなります。
ブランドや著者の認識精度の向上
エンティティの理解が向上していることにより、Googleはブランドや著者をより正確に認識できるようになりました。
これは、E-E-A-Tの評価にも大きく影響します。
特定の分野で専門性を持つ著者が一貫して質の高いコンテンツを発信している場合、その著者自体がエンティティとして認識され、その人物が作成したコンテンツの信頼性が向上するでしょう。
同様に、ブランドとしての認知度が高い企業のコンテンツは、そのブランドエンティティの権威性により、検索結果での評価が向上する傾向があります。
エンティティを高める方法
検索エンジンに自社や自サイトを正しく認識してもらうためには、エンティティとしての「明確さ」や「一貫性」を高めていくことが重要です。
ここでは、エンティティを高めるための具体的な対策を紹介しましょう。
<エンティティを高める方法>
構造化データを使って「誰が何を語っているか」を明確にする
検索エンジンは、「どのような人・組織が、どんなトピックについて語っているのか」を理解しようとしています。
そのため、著者情報や企業情報を正確に記述することは、エンティティの信頼性や専門性を伝える上で重要です。
そこでおすすめなのが、構造化データ(JSON-LD)をマークアップすること。
これによって検索エンジンにエンティティの情報を直接的に伝えることができます。
<エンティティを高めるのに効果的な構造化データ>
- Organizationスキーマ
会社や組織の情報を明確に定義し、ブランドエンティティを強化。
会社名、所在地、設立年、事業内容などの基本情報から、ソーシャルメディアアカウントまで含めることで、検索エンジンに包括的な組織情報を提供できる。 - Personスキーマ
記事の著者情報を構造化データで記述することで、「誰が書いた記事なのか」を検索エンジンに明確に伝える。
著者の専門分野、経歴、所属組織などの情報を含めることで、コンテンツの権威性の向上につながる可能性も。 - Articleスキーマ
記事の内容、公開日、更新日、カテゴリなどの情報を構造化することで、コンテンツの詳細を検索エンジンに正確に伝える。
他サイトとの関連付けで信頼性を高める
エンティティの信頼性を高めるためには、ほかの信頼できるWebサイトと関連付けをしましょう。
これは、検索エンジンが「第三者からの評価」を重視するため。
「誰が言っているのか」だけでなく、「他者からどう認識されているか」も、エンティティの強さを左右します。
具体的には、次のような対策が効果的でしょう。
<他サイトと自社・自サイトを関連付ける方法>
公式のプロフィールや外部サービスとリンクする
まずは、自社や著者の信頼できるプロフィールページと相互にリンクさせましょう。
企業の場合は、コーポレートサイトやプレスリリース、採用ページなどで一貫した情報を掲載すること。
また、著者の場合は、X(旧Twitter)やnoteなどでプロフィールを整えましょう。
その上で、エンティティを高めたいWebサイトやページと相互リンクを貼るようにしてください。
このようにして「この人・この企業は、この名前・情報で統一されている」とGoogleに伝えることが、エンティティの強化につながります。
信頼できる外部サイトからの言及を得る
より信頼性を高めるには、第三者による紹介や言及も効果的です。
次のような機会は積極的に活用しましょう。
<信頼できる外部サイトから言及の具体例>
- 業界団体の会員名簿や専門家一覧に掲載される
- プレスリリースを出し、信頼性の高い媒体に取り上げられる
- 外部メディアに寄稿し、名前や企業名が掲載される
検索エンジンは、こうしたリンクや言及を通じて「その名前や企業・ブランドが信頼に値する存在であるか」を判断しています。
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Googleビジネスプロフィールに登録する
実店舗や法人の場合は、Googleビジネスプロフィール(旧:Googleマイビジネス)への登録も有効です。
住所・電話番号・営業時間などを正確に記載し、自サイトとも紐づけておくことで、ナレッジグラフにも取り込まれやすくなります。
固有名詞や専門用語を明確に使う・定義する
検索エンジンにエンティティとして正しく認識してもらうには、表現の明確さも重要です。
「何についての情報か」「誰・何を指しているのか」を明確に書くことが、エンティティとしての識別性と関連性の強化につながります。
具体的には、次のことを心がけましょう。
<表現を明確にするポイント>
- 固有名詞の使用
一般的な表現ではなく、具体的な固有名詞を使用することで、検索エンジンにエンティティを正確に伝えることができます。
例:
「人気のソフトウェア」→「Microsoft Excel」
「有名な検索エンジン」→「Google」
「大手SNS」→「Facebook」「Twitter」 - 専門用語の明確な定義
業界特有の専門用語を使用する際は、その定義を明確に示すことが大切。
用語の後にカッコ内で説明を加える、詳細ページへのリンクを貼るなどして、定義を提供しましょう。 - 曖昧な表現の回避
「あれ」「これ」「それ」などのような曖昧な表現は極力避け、具体的な表現を使いましょう。
検索エンジンがコンテンツの内容を正確に把握しやすくなります。 - サイト全体で一貫性を保持
同じエンティティを指す際は、会社名の表記揺れなどを避け、サイト全体で一貫した表記を使用することが重要。
そうすることで、異なるページ間でも同じエンティティとして認識しやすくなり、Webサイト全体の権威性の向上につながります。
SEO以外でも求められるエンティティ
エンティティの重要性は、従来の検索結果での上位表示だけにとどまりません。
Googleのさまざまなサービスや機能において、エンティティの信頼性や権威性が評価基準として使われています。
ここでは、SEO以外の領域でエンティティがどのように活用され、どのような影響を与えるかを解説しましょう。
<SEO以外でエンティティが影響するもの>
Google Discover
Google Discoverは、ユーザーの過去の検索履歴、閲覧履歴、興味関心を分析し、関連するエンティティに基づいて、ユーザーが好みそうなコンテンツを表示するものです。
Google Discoverに表示されるためには、コンテンツの品質や話題性に加え、「誰が書いたか」「どのメディアから発信されたか」といった発信元のエンティティとしての信頼性も影響します。
Googleはトピックと発信者の関連性を見て、「このメディアはこのジャンルに詳しい」「この著者はこのテーマの専門家」と判断する傾向があるため、エンティティが強く関連付けられていることが表示の条件のひとつとなっています。
ニュース(トップニュース、注目のニュース)
Google検索の一部に表示される「トップニュース」「注目のニュース」枠でも、エンティティは重要な役割を果たします。
この枠に掲載されるには、Googleニュースのポリシーに準拠したコンテンツであることはもちろん、発信元としての信頼性や権威性があるかどうかが重視されます。
例えば、同じニュースを扱っていても、しっかりとした実績やプロフィールが確認できるメディアや著者のほうが、優先的に取り上げられる傾向にあります。
つまり、ここでも「誰が何を言っているか」が問われるため、エンティティとしての確立が表示機会を左右するのです。
画像・動画検索
画像検索や動画検索といったビジュアル中心の検索でも、実はエンティティが深く関わっています。
Googleは画像や動画そのものの内容に加え、その周辺にあるテキスト情報や文脈からエンティティを推測し、関連性の高いものを表示しています。
例えば、「富士山の風景」と検索した際には、「富士山」というエンティティと関係の深い地域名や観光地情報が含まれる画像が優先されやすくなります。
つまり、視覚情報でもどのエンティティに結びつくかが重要であり、テキスト・タイトル・キャプションなどでエンティティを補足する工夫が求められます。
Googleマップ・ビジネスプロフィール
実店舗を持つ企業や施設にとっては、Googleマップやビジネスプロフィール(旧:Googleマイビジネス)におけるエンティティ認識も欠かせません。
Googleは店舗名、カテゴリ、口コミ、運営元の情報などをもとに、「このビジネスは何を提供しているのか」「どこにあるのか」「信頼できるか」を判断しています。
そのため、名称の一貫性や、Webサイト・SNS・他メディアとの関連付けがしっかりしていると、Googleに正確なエンティティとして認識され、検索結果やマップ上での表示精度が向上します。
これはローカルSEOの観点でも重要で、地域名+業種などでの表示やレビューの信頼性にもつながるため、見落とせない要素です。
SEOで成果を出すなら、まずエンティティを意識しよう
いまのSEOで成果を出したいなら、まず取り組むべきは「エンティティの強化」です。
検索エンジンは、コンテンツの意味や発信元をより深く理解するようになっており、「誰が、どんなテーマで語っているか」がかつてないほど重視されています。
これまでのように、単にキーワードを盛り込むだけではなく、自社名や著者名などを検索エンジンに正しく伝え、信頼できる情報の発信元として理解してもらうことが、検索結果だけでなく、Google DiscoverやGoogleニュース枠などにまで影響します。
SEOの本質がエンティティベースに移行しつつある今、エンティティを意識したコンテンツ設計や情報整理は、今後の戦略に欠かせない視点といえるでしょう。
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