コンテンツファクトリーで効率的なコンテンツ制作をする方法

コンテンツファクトリーで効率的なコンテンツ制作をする方法

米国では、コンテンツ制作のプロセスにおいて、「コンテンツファーム(農場)」と「コンテンツファクトリー(工場)(※)」という考え方があります。コンテンツファームは、質の悪いコンテンツを大量生産するしくみのことで、コンテンツファクトリーは、計画的かつ戦略的に作られたコンテンツづくりのしくみのことをいいます。
(※)コンテンツ運営を手がけるThe Content Wrangler社CEOのScott Abel氏が提唱する考え方。

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質の高いコンテンツ制作の切り札「コンテンツファクトリー」

コンテンツファームとは、質の低いコンテンツを大量生産する企業やサービスのことです。もちろんどの企業も、計画的かつ戦略的に質の高いコンテンツを作りたいと考えます。しかし、多くのメディアや企業が、コンテンツファーム化している実情があります。それはいったい、なぜでしょうか。
理由として挙げられるのは、コンテンツを大量生産すれば、Googleの検索エンジンに引っかかりやすくなり、上位表示される可能性が高くなるという現状があるからです。コンテンツを大量に配信したいが、予算は限られている。だから、とりあえず質は問わず、安くコンテンツを大量生産するようになったのです。株式会社ディー・エヌ・エーが運営していた医療関連メディア「WELQ」をはじめ、多くのメディアが嘘や盗用のコンテンツを粗製乱造して問題になったのは周知のとおりです。

しかし、この事件をきっかけに、ウェブメディア業界の意識も変わりつつあります。また、Googleの検索エンジンの性能が日々向上していることもあり、質の低いコンテンツを大量生産するメリットが小さくなっています。だから、「質の高いコンテンツ」を作るという、本来あるべき流れになってきているのです。

とはいえ、質の高いコンテンツを作るためには、やはりそれなりのコストがかかります。では、質の高いコンテンツを効率良く制作するためには、どうすればいいのでしょうか。そこで注目されているのが、コンテンツファクトリーの考え方なのです。

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コンテンツを大量生産すれば、Googleの検索エンジンに引っかかりやすくなり、上位表示される可能性が高くなるという傾向(左)があるものの、Googleの性能も日々改善され、質の高いコンテンツが検索で正当に評価されるようになってきている(右)。

自動車業界に学ぶ工場生産の効率化

自動車業界には、「ジャスト・イン・タイム(JIT)」という考え方があります。これは、顧客の必要とする品物を、必要なときに必要な量だけ在庫し、いつ何を買いにきても、欠品なくそろえておくことを意味します。

スーパーマーケット業界でよく使われているこの考え方を応用して成功したのが、トヨタ自動車の有名な「かんばん方式」です。自動車を効率良く大量に生産するためには、緻密な生産計画を立てる必要があります。その生産計画に応じて「必要な物を、必要なときに、必要なだけ」供給することで、無駄を徹底的に排除すれば、生産効率が向上するというわけです。

自動車は、約30,000点の部品を組み合わせて完成させますが、コンテンツファクトリーでは、逆に1つの原型から30,000点の部品を製造していくイメージです。このような、原型をベースに多くのコンテンツを制作し、1本あたりのコストを下げる方法を「ワンソース・マルチユース」といいます。

効率的にコンテンツを生み出すワンソース・マルチユース

コンテンツ1本1本を、すべてゼロからオリジナルで制作するのは、コストも時間もかかります。かといって、毎月数本の配信では、なかなか狙ったターゲットに届きません。いくら価値の高いコンテンツでも、ある程度の量は配信していく必要があります。

また、ユーザーへ効果的に情報を届けるために、さまざまなチャネルに合わせたコンテンツを制作する必要もあります。さらに、ユーザーの関与度によって、コンタクトポイントも異なります。適切なコンテンツを、適切なターゲットに、適切なタイミングで効率良く届けることが、ワンソース・マルチユースの活用目的です。

ワンソースを決めたら、目的に応じて最も効果的なチャネルを選択する

ワンソース・マルチユースでは、コンテンツ全体を包括する「KGI(重要目標達成指標)」「コンセプト」「意図・目的」「ターゲット」「一番伝えたいこと」を決め、整理します。全体像が描けたら、原型となるワンソースを決めます。

ワンソースが決まったら、自社の商品やサービスにとって、どんなコンテンツが最も効果的にユーザーに届き、興味・関心を引けるかを考えます。

ワンソースは、大きく以下の4つのマルチユースに展開できます。

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1 基本情報の整理と発信

会社の基本情報を整理してユーザーの動向に合わせ、わかりやすくブログやニュースリリース、PDFにして配信します。

コンテンツを作りたいが、どこから始めていいかわからないという人も多いと思います。そこで、まず自社が持つ基礎情報の整理と配信から始めます。どんなコンテンツを作ったらユーザーが集まるのかを考えるのは次の段階です。

核となるコンテンツが決まったら、例えばブログの内容が、ニュースリリースやPDFのダウンロード資料、メールマガジンに落とし込めないか考えます。最初から記事を書く段階でこれらのチャネルを想定しておくと、手間とコストがかなり省けます。

ニュースリリースは、これまではマスメディアに情報を提供して、各メディアに取り扱ってもらうものでした。そのため、なるべく簡潔にまとめた文書を用意するのが通例でした。しかし、オウンドメディアを持つ場合、自社から直接配信するときは、各メディアにまとめてもらうわけではないので、事実だけを淡々としるした、無味乾燥な文面にしても誰も拾ってくれません。

無理矢理おもしろくする必要もないのですが、リリースを読んでメディアが取り上げたくなったり、SNSで拡散されやすかったりするような、キャッチーな文章にすることを心掛けるべきです。マスメディア向けのプレスリリースは、記者や編集者にメディアに合わせて書き直してもらう「素材」という意識がまだ残っていますが、今は直接ユーザーに届けることができるのです。なるべく自分たちの言葉で、直接ユーザーに響くような文章を考えましょう。

メールマガジンも同様です。一方的な押しつけの宣伝や無味乾燥な情報では、せっかく購読してくれたユーザーも、じきに開封してくれなくなります。メールマガジンの購読者は、見込み客としてもかなり顧客に近い階層にいる人たちなので、逃さないように工夫しましょう。ブログ、PDF、ニュースリリース、メールマガジンは、低コストで展開できるので、コンテンツマーケティングのスタート地点だと思って始めてみてください。

そして、最初から作っておくと、後々大きな効果が出てくるのがQ&Aです。Q&Aは、原型となるワンソースとして汎用性が高いので、ぜひおすすめします。自社の商品・サービスに関連する情報は、すべてQ&Aとして成立します。Q&Aをコンテンツにする場合は、商品やサービスの宣伝にするのではなく、あくまでもユーザーの課題や疑問に答える形式にまとめ、ユーザー視点で作ります。Q&Aを地道に蓄積していくことで、SEO的にも、ユーザーとのエンゲージメントの構築にも絶大な効果を発揮します。

2 導線強化(SNS)

SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用して、サイト外から新しいユーザーを呼び込むための導線設計をします。

オウンドメディアで展開するコンテンツは、同時にSNSでの配信も想定して制作します。広告を打ち出さない限り、SNSによる拡散なくして、ユーザーに情報が届くことはないと考えてください。

特にTwitter、Facebook、Instagram、YouTubeなどをどう活用するかについては、拠点となるオウンドメディアの運営と最初からセットで考えておきましょう。近年、急速に普及しているInstagramは、特に女性をターゲットとした企業には欠かせないSNSになっています。

3 商品・サービスの深い情報

商品やサービスに関心を示したユーザーに向けて、より内容の深い情報を提供し、拡散を促進し、ロイヤルティの向上を図ります。

おもにBtoBを対象とした施策として効果的なのが、ホワイトペーパー(白書)や事例紹介などの蓄積型コンテンツです。興味・関心を引いた後、ユーザーが購入・利用する一歩手前の段階となります。

ホワイトペーパーは、市場動向やトレンドの分析、導入事例の解説、他社商品との比較などと関連付けて、自社の商品やサービスの利点・長所を訴求することが目的です。

また、SlideShareというサービスでは、企画資料や営業資料をスライド形式で公開することができます。特に、BtoB領域で浸透していますので、ぜひ活用してみてください。セミナーや会議などで作成した資料や、ブログで紹介した記事をPDFにして、SlideShareにアーカイブしておけば、認知獲得にじわじわと効いてきます。

ユーザーの抱えている課題解決に役立つ情報を盛り込むことで、自社の商品やサービスへの興味を喚起します。ユーザーの情報と引き換えにダウンロードをしてもらうことも多く、その後のエンゲージメントの向上につながることが期待できます。

ユーザーは、商品情報よりも商品によって得られる利益に関心があるので、特に導入事例の場合は、ユーザーメリットの視点から制作します。

4 コンテンツの強化

コンテンツが蓄積されてきたら、基礎情報の補足や実際に使うシーンなど、認知獲得・情報拡散を加速させる動画コンテンツやバズコンテンツを発信してもいいでしょう。

会社の社長や社員がみずから登場して、商品やサービスを説明する動画は、営業ツールとしてはとても効果的です。また、BtoCの場合は、バズコンテンツとしての期待も大きいのが動画コンテンツのメリットです。かつてYouTubeでiPhoneをミキサーで粉々にした動画を紹介して世界中でバイラルし、一躍成長企業になったブレンドテックというミキサーの会社をご存じの人も多いのではないでしょうか。

動画制作は、わざわざスタジオを借りたり、プロのカメラマンを起用して撮影したりする必要はありません。市販のビデオカメラで十分です。自社で開催したセミナーをそのまま動画コンテンツとして再利用してもいいでしょう。商品を紹介する動画でも、テレビCMのような撮影をする必要はありません。10~20秒程度の映像でフォーマットを決めてしまえば、それほど手間とコストをかけないで制作できます。毎回1本1本撮り下ろさなくても、一度に10回分をまとめて撮るようにすれば、コスト削減につながります。

また、動画はコンテンツとしての重要度が急速に増しています。FacebookやInstagramでは、動画コンテンツが標準化する勢いです。
株式会社サイバーエージェントと株式会社デジタルインファクトが共同で実施した国内動画広告の調査によると、2016年の動画広告市場規模が842億円なのに対して、2019年には2,000億円、2022年には3,000億円規模に到達すると見られています。

ワンソース・マルチユースのコンテンツ制作例

最後に、架空の電気自動車のスタートアップ企業を例に、ワンソース・マルチユースでコンテンツを制作する計画を立ててみましょう。

ここでは、日々更新されるブログをワンソースとします。ブログのコンテンツは、さまざまなチャネルに活かせるよう、最新の開発状況のレポートやコラム、世界の電気自動車の現状、開発者紹介といった内容にしています。

まず、KGI、コンセプト、意図・目的、ターゲット、一番伝えたいことを設定します。

・KGI:電気自動車開発のための資金集めと、電気自動車の普及のための空気づくり
・コンセプト:交通事故ゼロ、CO2ゼロの時代を目指して
・意図・目的:電気自動車のメリットの啓蒙、電気自動車開発への投資、政治的活動の活性化
・ターゲット:投資家、協業会社、自動車メーカー
・一番伝えたいこと:電気自動車の普及によって、交通事故の減少、CO2の減少、交通渋滞の解消、人々の移動手段に革命が起きる

これに基づき、先ほど紹介した4つのマルチユースに展開してみましょう。

1 基礎情報の整理と発信
・PDF:電気自動車が実現する社会
・ニュースリリース:国内外の電気自動車の動向、セミナー、説明会、学会などの定期告知
・メールマガジン:開発状況と開発者のコラムなど

2 導線強化(SNS)
・SNS:電気自動車に関するトリビアネタ、試乗レポート(ガソリン自動車との違い、快適性、安全性、居住性、デザインなど)、ユーザー参加の試乗イベント(体験コメント)

3 商品・サービスの深い情報
・ホワイトペーパー:電気自動車産業のレポート、シンポジウムなどの発表資料、開発への投資価値について

4 コンテンツの強化
・動画コンテンツ:電気自動車を使った感動ドラマ、試乗レポート(タレントを起用して話題性を狙う)、開発者の電気自動車のしくみ解説

以上、電気自動車のスタートアップ企業を例に、ワンソース・マルチユースの導入例を紹介しました。ここで最も重要なのは、1本1本のコンテンツを都度考えるのではなく、最初にどのデバイスやチャネルで展開、流用できるかを想定して、効率的にまとめて制作することです。既存コンテンツが再利用しやすい構造になっていることが肝心なのです。それがコンテンツファクトリーの考え方です。

コンテンツを制作することは長期戦になります。限られた予算でいかに効率良く配信していくかが、成功に導くカギとなります。ここで紹介したチャネル別コンテンツをすべて一気にやる必要はありません。PDCAを回しながら、適切なコンテンツを、適切なターゲットに、適切なタイミングで配信していけるように制作していけばいいでしょう。

なおナイルでは、コンテンツ制作代行のプランをご用意しております。さまざまなコンテンツを作成して、情報発信していきたいけれど、記事を書くリソースがない場合、まずはお気軽にご相談ください。

編集者情報

金子 光
金子 光(かねこ ひかる)
新卒で楽天グループ株式会社に入社。
営業管理として40人規模のチームをマネジメント。その後社員3人のベンチャー企業に入社し新規事業立ち上げを経験。
現在はナイルのマーケティング相談室編集長として、Webマーケティングに従事している。
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監修者情報

ナイル編集部
ナイル編集部

2007年に創業し、約15年間で累計2,000社以上の会社にマーケティング支援を行う。また、会社としても様々な本を出版しており、業界へのノウハウ浸透に貢献している。(実績・事例はこちら

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