コンテンツマーケティングに「王様」の居場所はない

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コンテンツマーケティングに「王様」の居場所はない

コンテンツは誰のためのものか?

先日、あるメディアの企画で、数名のタレントさんにインタビューをする機会がありました。同じテーマについて、みなさんにそれぞれプロの視点から語ってもらうというものでした。

そのとき1名だけ、専属のカメラマンを指定し、記事もインタビューで聞いた話とほとんど違う自己宣伝の話に変更してきた方がいました。この事務所はブランディングが徹底していたのでしょうか?

そうかもしれません。しかしわたしは、そのときふと思いました。「このコンテンツは誰のためのものか?」と。

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Content Marketing InstituteのJoe Pulizziが提唱するコンテンツマーケティングに必要な三原則。

メディアには読者がついています。そして、そのメディアは読者の期待に応えるために、カメラマン、ライター、デザイナーなど、適切なスタッフをキャスティングします。

一方、自社都合のコンテンテンツを強要してきた事務所は、メディアの先にいる読者は見えていません。もちろん読者からどのように見られているかも理解できていないでしょう。そう、まさに「裸の王様」なのです。

ほかのタレントが全体の企画に沿った形で撮影とインタビューに協力してくれたのは、彼らがいい人だとか、やさしいから、という話ではありません。取材を受ける以上、きちんとメディアの特性とその先にいるファンを理解しているから、メディアの方針、企画を尊重して協力してくれるのです。

ここで改めてコンテンツマーケティングの定義について振り返ってみましょう。

コンテンツマーケティングとは、ターゲットに有益で説得力のあるコンテンツを制作・配信することによって、ターゲットを引き寄せ、獲得し、エンゲージメントをつくり出すためのマーケティングおよびビジネス手法である。(Content Marketing Instituteより引用)

ここで重要なのが「ターゲットに有益で説得力のあるコンテンツ」という点です。

同じコストと時間をかけるなら、なるべく自社の情報をたくさん発信したい、と思うのは理にかなっています。そのような情報を発信すること自体は問題ではありません。

問題は、そのコンテンツを「誰が求め、誰が探しているか」を考えないことです。そこを無視して発信したコンテンツは誰にも届きません。企業が情報発信をするとき、自社に都合のいい情報だけを出したいがあまり「裸の王様」となって、ターゲットを見失うケースは少なくありません。

ユーザーのニーズを無視したコンテンツの一方的な押しつけは、自分が「裸の王様」であることに気づかずに、他人の家(メディア)に土足で入り込むようなものです。

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土足マーケティングとしての広告

これまで広告はAIDMA(Attention・Interest・Desire・Memory・Action)という消費者の購買行動パターンに從って考えられ、またユーザー(ファン)を抱えるメディアに介在することで、その役割を果たしてきました。

マーケティング業界のカリスマ、セス・ゴーディンは著書『パーミション・マーケティング』(海と月社刊行)で、このような広告を土足マーケティング(インタラプションマーケティング)と呼び、日常生活に侵入するマーケティングの効率の悪さについて警鐘を鳴らしています。

かつて広告主がユーザーに情報を伝えるためには、一方通行の土足マーケティングしか手段がありませんでした。しかし、ユーザーが欲しい情報だけを取捨選択し、ブログやソーシャルメディアによって自ら情報を発信することもできるようになった昨今、AIDMA型の広告が従来通りの役割を果たすのは難しくなってきています。

土足マーケティングは今後ますますユーザーに忌避され、その費用対効果が低下していくことは避けられないでしょう。海外ではアドブロック(広告を自動的に非表示にする)も普及しはじめ、インプレッションで勝負する広告主は窮地に追い込まれつつあります。

9月にリリースされたアップルのiOS9でも「コンテンツブロッカー」が導入され、広告が排除される動きに拍車がかかります。

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セス・ゴーディン著『パーミション・マーケティング』(海と月社刊行)

では、これまで土足マーケティングでビジネスをしてきた企業はどうすればよいのでしょうか。ペイドメディアを使って出稿することはすべてムダになるのでしょうか。

土足マーケティングからネイティブアドへ

最近は、そんな土足マーケティングが抱える課題の解決策としてネイティブアドが注目を浴びています(ここでいうネイティブアドは、スポンサードコンテンツと呼ばれるコンテンツ型広告を指します)。土足マーケティングは、「邪魔・迷惑」というネガティブな側面が目立ち、費用対効果が低くなってきている、効果検証が難しい、といった問題を抱えています。

一方、すでに人気と信頼を得ているメディアにディストリビュートされるネイティブアドは、第三者(メディア)視点で作られるコンテンツのため信頼性が高い、ユーザーが楽しめる(役に立つ)コンテンツが作りやすい、といったメリットがあります。

ネイティブアドは、すでにユーザーと高いエンゲージメントを持つメディアの力を借りてストーリーを届けるため、より共感を得やすくなります。そのためネイティブアドは、ユーザーに態度変容を促すためのペイドメディアとして効率的で有効な手法なのです。

コンテンツマーケティングの主な役割が「見込み顧客の獲得と育成」や「顧客との長期的な繋がりを維持すること」であると考えれば、ネイティブアドはコンテンツマーケティングと非常に親和性の高い広告戦略といえます。

ユーザーがすでに信頼し、ファンになっているメディアの文脈に乗って広告を提供するため、企業がそのメディアに”適切で価値あるコンテンツ”を提供する限り、広告を受け入れる土壌がユーザーにできています

9月に掲載された「DIGIDAY日本版」の記事によると、米国で人気の新興メディアUpworthyがネイティブアドと通常コンテンツを比較したところ、ネイティブアドのほうが閲覧、アテンション時間(実際にコンテンツに注目している時間)ともに約3倍を獲得した、というデータも発表されています。

日本でもサイバーエージェントが、広告のコンテンツ力強化と広告効果の向上を目的に専門組織「エディトリアルアドスタジオ」を設立するなど、ネイティブアド事業への期待値は高まっています。

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コンテンツは「王様」ではない

コンテンツの重要性を語るとき、よく「コンテンツは王様(Content is King)」というフレーズが引用されることがあります。

しかし、ユーザーの立場で考えれば、コンテンツに求められるのは「王様」ではなく、むしろ「下僕(Servant)」としての役割です。コンテンツも広告も、「王様」として上意下達のメッセージを一方的に送るのではなく、ユーザーにとって便利で役に立つ「下僕」であるべきなのです。

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広告が他人の家(メディア)に土足で入る「王様」であり続ける限り、「王様」に依存するメディアが生き残ることは難しいでしょう。とはいえ、メディアは広告収入に頼らないで生き抜く決定的なビジネススキームをまだ見出せないでいます。

ユーザーと最適なコミュニケーションを図り、エンゲージメントを築いていくためには、企業は土足マーケティングから脱却し、広告をコンテンツ化していかなければなりません。さらには、自らが「王様の城」を崩し、ユーザーに愛される「下僕の城(オウンドメディア)」を築くことが求められるでしょう。

ユーザーは「王様」を無視することも、「王様は裸だ!」と叫ぶこともできるのですから。

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