SEOの重要性は引き続き高い一方で、実際の推進には多くの課題が存在します。
専門知識の習得、組織内での理解促進、技術的な実装、成果の可視化など、SEO担当者が直面する悩みは多岐にわたると考えられるでしょう。
今回は、生成AIが普及しはじめ、SEOへの向き合い方が変化している今、現場で活躍する担当者を対象に、SEOに取り組むにあたって抱えている壁や不安について調査しました。
その結果を通じて、SEOを円滑に推進するために必要な組織体制や、今後の取り組みの方向性を考えていきます。
目次
調査概要
- 調査期間:9月1日~3日
- 調査方法:インターネット調査
- 調査対象:全国のデジタルマーケティング従事者275名
SEO推進を阻む三大要因は「知識不足」「社内理解不足」「リソース制約」
SEOを推進する上で「壁」になっている要因として最も多く挙がったのは「SEO知識・ノウハウ不足」(53.1%)でした。
SEOはアルゴリズムの変化や検索行動の多様化により、常に最新の知見をキャッチアップする必要があります。
しかし、担当者が兼務であったり、体系的に学ぶ機会が限られていたりするケースも多く、十分な知識を持たないまま施策を進めざるを得ない実情もありそうです。
このことが、成果につながらない要因になると考えられるでしょう。
次に回答が多かったのは「経営層・他部門の理解・協力が得られない」(47.6%)です。
SEOはコンテンツ制作や開発、デザインなど幅広い部門を巻き込む必要がある施策ですが、関連部署に成果のインパクトを伝えきれず、十分な協力体制を築けないことが大きな課題となっているようです。
短期的な売上への直結が見えづらいがゆえに、経営層が優先順位を下げてしまうケースも少なくないでしょう。
また「実装リソース不足」(42.5%)も大きな壁とされています。
SEOで必要となるサイト改修や構造的な改善は、開発やデザインのリソースを確保できなければ前に進めません。
「経営層・他部門の理解不足」とも連動することですが、SEOの投資対効果を明示できず、結果的に開発優先度が下がってしまっているケースもありそうです。
全体として、SEO担当者の悩みは「知識不足」と「社内理解不足」、そして「リソース制約」が立ちはだかっていることが浮き彫りになりました。
これらを解決するためには、担当者自身の学習に加え、社内に成果を伝えるストーリーテリングや、外部パートナーの知見活用が鍵になるでしょう。
施策領域別では「コンテンツ制作」「テクニカルSEO」が大きな課題
SEOの具体的な施策領域における課題は、「コンテンツ制作」(54.5%)が最も多い結果となりました。
半数以上の担当者がコンテンツ制作に課題を感じている背景には、質の高いコンテンツを継続的に制作することの難しさがあります。
Googleが重視するE-E-A-Tを満たしたコンテンツを制作するには、専門的なスキルが必要な上、コンスタントに公開し続ける適切な制作体制が必要です。
そのスキルとリソースが両立できず、SEO施策全体の停滞につながっている現状が浮き彫りになったといえるでしょう。
次いで、SEOの土台となる「テクニカルSEO」(45.1%)も半数近い担当者が課題として挙げていました。
必須の施策にもかかわらず、サイトの技術的な最適化に関する専門知識が不足しているだけでなく、開発チームとの連携が不可欠な領域。
つまり、前設問で明らかになった「実装リソース不足」とも関連していると考えられます。
一方、現在注目を集める「LLMO」(22.9%)が一定の割合を占めました。
LLMOは新しい施策のため、取り組み途上の企業が多いようですが、今後ますます重要性が高まっていく領域です。
そのため、今から積極的に取り組むことで、競合と差がつく可能性は高いでしょう。
開発・デザイン・編集部門との調整が最大のハードルに
ここまでの設問でも浮き彫りとなっていたとおり、SEOを推進する上で調整が大変な部門は「開発」(43.3%)が最も多く、次いで「デザイン」(39.6%)、「編集・ライティング」(37.8%)となりました。
わずか2.5%の担当者しか「調整は大変ではない」と回答しておらず、ほとんどのSEO担当者が何らかの社内調整に苦労している実態が明らかになっています。
開発部門との調整が最も困難とされる背景には、SEOとシステム開発の優先順位や工程の違いがあるのでしょう。
開発チームはシステム不具合対応をはじめ、緊急度の高いタスクを抱えており、SEO施策は後回しにされがちです。
また、テクニカルSEOは、開発工数を要する一方で、その効果がすぐには見えにくいため、開発側の理解を得ることが困難なケースが多いと考えられます。
デザイン部門との調整では、サイトのUI改善や表示要素の最適化を進めたいSEO側と、ブランドイメージやデザイン性を重視する側の意見がぶつかることも。
また、編集・ライティング部門との調整では、SEO的なキーワード活用や情報量確保と、読みやすさやライティング方針とのバランスをどう取るかが課題になります。
こうした摩擦は、SEOの意図を理解してもらうコミュニケーション不足から生じることも多いと考えられます。
SEOは複数部門を横断する取り組みであるため、担当者は施策内容をわかりやすく翻訳し、各部門にとってのメリットを提示することがスムーズな調整の鍵といえるでしょう。
“成果が見えない”と言われる理由――SEO効果を数値で見せられないジレンマ
SEO成果を社内で評価してもらう際、最大のハードルとして挙がったのは「KPI(指標)の設定が難しい」(53.1%)でした。
SEOは検索順位や流入数、コンバージョンなど多様な指標が関わるため、何をKPIに据えるべきか判断が難しい領域です。
特に、コラム記事は流入が増加しても短期的な売上や問い合わせに直結しないケースも多く、社内で「どの成果を評価すべきか」が曖昧になりやすいといえるでしょう。
そして次に多かったのは、「データの計測・可視化環境が不十分」(49.5%)でした。
GA4移行後の運用の難しさや、データを可視化するためのツールの整備不足などにより、SEO施策の効果を数値で示すことができない担当者も少なくないようです。
可視化できないことで経営層や他部門への説明力が低下し、評価が得られにくくなる悪循環が生じている可能性は高いと考えられます。
また、「ROI(投資収益率)が合わない」(38.2%)という回答も目立ちました。
特にSEOは人件費や外注費がそれなりにかかるにもかかわらず、成果が顕在化するまでに時間を要するため、短期的なROIで測ると不利になりやすい施策です。
「成果が短期で出にくい/リードタイムの長さ」(36.0%)も大きな障壁として挙がっていることからもわかるとおり、こういった施策特性への理解不足が評価を難しくしているのかもしれません。
全体として、SEOの社内評価は「成果をどう定義するか」「それをどう可視化して伝えるか」が大きな壁となっていることが明らかになりました。
担当者に求められるのは、検索順位や流入といった中間指標を段階的に示しつつ、最終的な事業貢献へとつなげるストーリー設計です。
これにより、社内での理解と納得感を高め、評価のハードルを乗り越えやすくなると考えられます。
継続的なコンテンツ制作や生成AIの普及における焦燥感が明らかに
最も多く挙がった不安は、「ネタが尽きて、コンテンツの公開が滞ること」(47.6%)でした。
SEOはマラソンのように継続力が問われますが、記事を作り続けるにあたっては新しい切り口が見つからず、公開ペースが落ちてしまうケースもあるようです。
必ずしも新規でコンテンツを公開することがすべてではないものの、この停滞感が担当者にとって大きな心理的負担となっているようです。
一方で、「生成AIの普及で検索流入が減ってしまうこと」(45.5%)、「生成AIへの対策や検索結果の変化についていけるか」(30.9%)といった、生成AIによる変化への懸念も強く表れました。
検索エンジンの役割が変わる中で、自社の取り組みが有効であり続けるのか、先行きに不安を抱くのは自然なことです。
さらに、「コアアップデートで順位が急落すること」(40.4%)や「取り組んでいる施策が正しいのか自信が持てない」(30.2%)といった、SEOが持つ本質的な“不確実性”を表す不安も、多く挙げられています。
このように、SEO担当者の不安は、コンテンツの継続性、生成AIの台頭、アルゴリズムの不確実性の3つに集約されることがわかりました。
では、どこから解決の糸口を探るべきか――鍵となるのは、企画力の強化と変化を先取りする情報収集、そしてSEO単独ではなくマーケティング施策全体の連携といえます。
SEO担当者の課題は「知識不足」と「組織連携」がメイン
今回の調査結果から、SEO担当者が直面している課題の全体像が明らかになりました。
ひとつは担当者個人が直面する専門知識やスキルの限界、もうひとつは組織内での理解不足や連携不備という構造的な障壁です。
さらに、生成AIの普及に関連する課題も一定数あり、SEO全体が変革期にあることを示しているといえるでしょう。
これらの課題解決には、個人の成長支援と組織全体でのSEO理解促進という2軸でのアプローチが不可欠。
もし、社内で解決しづらい課題がある場合は、SEOの専門家に頼ってスキルとリソースを担保し、効率的にSEOを進めていきましょう。
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