SEOやLLMO(AI検索対策)で成果を出そうとすると、必ずと言っていいほど「ブランド力が足りない」という壁にぶつかります。
被リンクを増やす、外部のメディアに取り上げてもらう――これらももちろん重要な施策ですが、そもそもの“ブランドの力”が重要です。
ただ、「ブランド力?どうやって高められるの…?」と思っている人も少なくないでしょう。
そこで今回は、2018年にサービスをスタートし、現在は累計申込者数30万人を突破している「カーリースカルモくん(以下、カルモ)」のマーケティングを統括する、ナイル株式会社の福田士朗に取材!
カルモを立ち上げて“認知度ゼロ”の状態から、SEO・LLMOで成果が出るまでになった「ブランド力の高め方」を解説してもらいました。
<話を聞いたのはこの人!>

福田 士朗
ナイル株式会社 執行役員/自動車産業DX事業部 事業CMO
1989年生まれ、早稲田大学商学部卒業。2015年にナイル株式会社に入社。自社サービス「Appliv(現・アプリブ)」にて営業・収益化業務を担当し、後に同サービスの責任者に就任。2020年より自動車産業DX事業部へ異動。以降、同事業部にてサービスのグロース・マーケティング業務に従事。
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目次
SEO/LLMOの文脈でいう「ブランド力」とは何か
SEOやLLMOの文脈では、「ブランド力が必要だ」とよく言われます。
ブランドというと、一般的には「多くの人に広く知られている」「権威性がある」といった状態をイメージする方が多いでしょう。
実際、SEOにおいてはその一指標として「指名検索の多さ」が挙げられることが多く、指名検索を増やすために権威性や認知を強化する、という取り組みをしている企業も少なくありません。
ただ、SEO・LLMOで本当に効いてくるのが“幅広い認知”なのかというと、私はそう単純ではないと感じています。
というのも、今、検索をはじめとするプラットフォームの側で、もう一段深いところで構造的な変化が起きているからです。
それが、Web検索やさまざまなコンテンツメディアにおけるパーソナライズ化です。
例えば、Web検索はユーザーの位置情報や検索履歴によって、同じクエリで検索しても他人とは異なる検索結果が出ます。
YouTubeも、各ユーザーの閲覧履歴によって、他人とレコメンドされる動画がまったく違うケースは少なくありません。
また、生成AIの回答も、質問者のコンテキストで変わりますよね。
つまり、「みんなが同じ検索結果を見ている」という前提そのものが、揺らいできているのです。
一人の顧客の中に“自社を選ぶ理由”が刻まれることの大切さ
みんなが同じ検索結果にならないのであれば、従来の「広く知られている」というブランド力だけでは不十分です。
むしろ、特定の顧客層から強く求められていることのほうが重要になります。
100万人に薄く知られているより、意向度の高い10万人に「この商品/サービスならあの会社」と思われているほうが、SEOでの上位表示、LLMOでの言及獲得、ひいては事業成果につながるでしょう。
では、「特定の顧客から強く求められる」とはどういう状態か――結局、一人の顧客の中に“自社を選ぶ理由”がちゃんと刻まれていることだと思います。
その総量が多いほど指名検索も増え、SEOやLLMOにおける評価につながっていくのではないでしょうか。
では、その「一人の中に選ばれる理由を刻んでいく」プロセスを、カルモの実例で解説します。
カルモの立ち上げ期:何かが足りない
「カーリースカルモくん」の立ち上げは2018年、「マイカー賃貸 カルモ」という名前でサービスをスタートしました。
「リース」という言葉は日本人に馴染みが薄かったため、「賃貸」という直感的な言葉でサービス内容を伝える狙いでした。
ロゴのデザインはエナメルブルーをベースに、IT企業らしいおしゃれな雰囲気でしたね。

「マイカー賃貸 カルモ」時代のロゴ
また、ユーザーからの認知を獲得するために、次のような施策に取り組みました。
- 著名人をプロモーションに起用
- SEOと広告
無名のIT企業が車のサービスを提供することから、認知施策として著名な方にご協力をいただくなど、ユーザーの不安を払拭する施策を行いました。
さらに、SEOや広告といった、Webでの王道施策も展開しています。
成果はじわじわ出ていて、契約者数も利用者数も右肩上がりではありました。
しかし、2年やっても目標規模には届かず、「何かが足りない」状況が続いていたんです。
そこで気づいたのは、顧客理解が足りないということ。
自分たちのサービスを実際に使っている人が誰なのかを、ちゃんとわかっていませんでした。
それに気付く転機となったのは、「顧客起点マーケティング(※1)」の考え方との出会い。
これを実践するための分析手法のひとつである「N1分析(※2)」を参考に、お客様の声を丁寧に聞いていきました。
※1 顧客起点マーケティング…商品や企業側の視点ではなく、顧客一人ひとりの行動・心理・購買理由を起点に、戦略や施策を設計するマーケティング手法。顧客理解にもとづき、「誰に、どんな価値を、どう届けるか」を考える点が特徴。
※2 N1分析…1人の顧客に着目して行動や心理を深く分析し、購買理由や顧客ニーズを具体的に把握する手法。
そこで見えてきた顧客像は、私たちが描いていた像とまったく違っていたのです。
当初は、カーシェアに興味がある都市部の人をイメージしていましたが、実際のカルモの顧客は、車を日常の足として使う都市部以外の方々が中心でした。
そこで、一からカルモというブランドを見直すことになります。
リブランディング期:顧客理解を深め、ダイナミック&的を射た施策を展開
実際の顧客像が見えると、洗練されたブランドイメージは主要顧客層と完全にミスマッチだったとわかりました。
そこで、顧客が求める「より安く、お得に車を持つ」という希望にまっすぐ応えるブランドへ作り直すことになり、次のような施策を実施しています。
サービスのネーミング・デザインを刷新する
サービス名を「おトクにマイカー 定額カルモくん」に変更しています(※3)。
※3 サービスの多角化などに伴い、2025年6月より「カーリースカルモくん」に再び名称を変更しています。
ロゴのデザインは「安い」のインパクトを出せるよう濃い黄色・黒・赤を基調にし、「安く車を持てるサービス」というイメージを強烈に刻みました。
また、このタイミングでオリジナルキャラクターの「カルモくん」を導入しています。

「おトクにマイカー 定額カルモくん」ロゴ

キャラクター「カルモくん」
サービス名は…正直「ダサい」と思われる名前だったかもしれませんが、それでいいのです。
大事なのは「顧客の脳内に強烈に残ること」。記号として記憶に残ることを目的に、インパクト最優先で設計しました。
マス広告でサービスを届ける「大砲」を打つ
次は、このサービスを届ける「大砲」が必要です。
そこで、テレビCMを打つことになりました。
コピーは「貯金ゼロでもマイカーが持てる」。
テレビCMでは
- 頭金0円、ボーナス払い0円
- 月1万円台から新車が持てる
- 日本初の11年リース
と、新車がお得に持てる点を端的に打ち出しました。
CMの出稿エリアからは、東京を意図的に外しました。
ターゲット層は「日常の足として車を利用する都市部以外の方」になる上、広告費が非常に高いためです。お客様がいる場所にメッセージを届ける、それに尽きます。
テレビCM以外にも、ラジオ、新聞、チラシ、交通広告といったオールドメディアもフル活用しました。
成果は明確で、テレビCMを展開したタイミングで、「カルモ」の指名検索数がはっきりとスパイクしています。

検索クエリ「カルモ」でのGoogleトレンドの推移
しかも、CMの効果はそれだけではありません。
テレビCMの後に、パブリシティとして番組内で「最近、車のサブスクが話題らしいですよ」といった形で紹介してくれることがあります。
これが、SEOでいえば被リンクやサイテーションの増加に直結するポイントですね。
広報の活動でさらに露出を増やす
テレビCMを打てば、勝手に露出が増えるわけではありません。
広報チームが並行してプレスリリースを出したり、メディアに取材の切り口を提供したりと、能動的に働きかけました。
名前が認知された直後はメディアも取り上げやすく、そこに広報の動きが乗ることで露出が増えていく構造です。

広報からのリリースは、自家用車にまつわる調査レポートをフックにしたものも多く出している。
引用:PR TIMES「【新社会人の車利用に関する調査】82%が通勤に必要と回答!一方で「新車購入のハードルが高い」との声も。」
オウンドメディアで顧客の意思決定に寄り添う
これはリブランディング後の取り組みではないのですが…ナイルは元々メディア事業の会社なので、立ち上げ当初から「カルモマガジン」というオウンドメディアを運営していました。

狙いはSEOで検索上位を獲得するためではなく、「車が欲しいんだけど…どうしようかな」と考える、一人の顧客の意思決定プロセスに寄り添うためのメディアです。
当時、カーリース業界ではWebメディアを運営している企業はほとんどありませんでした。
だからこそ、我々が本気でオウンドメディアを作ることで、「カーリース」で検索した人がほぼ必ずカルモマガジンに出会う状態を作れたんです。
記事を読んでカーリースの便益を理解し、「カルモに相談してみよう」と指名検索する――一人の顧客の中に「カルモ」が刻まれる導線を、オウンドメディアが担っていました。
実際、カルモマガジンは申し込み数の増加に大きく貢献しています。
また最近では、新サービス「車買取カルモくん」の立ち上げに伴い、「車買取ジャーナル」というメディアを始めました。
ここでは、主にインタビューを中心とした1次情報を公開しています。
「車を売りたい」顧客に向けて比較・検討の情報がすべてそろう状態を作り、その中で自社も推奨する。その結果としてトラフィックが生まれ、アフィリエイト収益も月200万円規模になっています。
認知も収益も自然に回るエコシステムですね。
メディア活用の考え方
さまざまな施策を行っているので、どのようにメディアを活用するかについて気になる方が多いと思いますので、カルモの場合を紹介します。
私は、元LINEの田端信太郎さんの「クロスメディアでの広告媒体配分はゴルフ場でのクラブ選択だ!」という考え方が好きなんです。
ゴルフでクラブを選ぶ際、遠くに飛ばすならドライバー、グリーン上ではパターを使いますよね。
それを広告に例えて、
- テレビCMは「ドライバー」…数千万人にリーチできる大砲
- 検索広告は「パター」…質はいいけれどスケールが小さい(パターだけではグリーンに乗るまでかなり時間がかかる)
と考えるというものです。
体感として、検索広告だけにいくら投資しても指名検索は生まれません。むしろ「限界CPAの罠」にはまります。
つまり、追加投資分の1件あたりのコストは跳ね上がっているのに、平均CPAで見ると気づきにくくなるということですね。
だからこそ、リーチの長いテレビCMという「ドライバー」で指名検索を発生させ、検索広告という「パター」でつなげる――この組み合わせが大事です。

テレビCMを打つ予算がない場合はどうする…?
とはいえ、テレビCMを打てる予算がない企業は少なくないでしょう。
そこで、次の2つをおすすめします。
TVer広告
ひとつは、TVer広告です。
私も運用していますが、認知拡大や指名検索の発生という点ではテレビCMとほぼ同等の効果を実感しています。
圧倒的に安く始められるので、予算が限られる企業には有効です。また、YouTube広告も同様の効果があると思います。
既存顧客の口コミ・紹介
TVer広告でも予算が厳しいなら、最も堅いのは既存顧客の口コミや紹介。
カルモでも「お友達紹介キャンペーン」を継続実施しています。
契約いただいている顧客のご家族やご友人は似た課題感を持つことが多いため、ご契約者様の紹介でサービスが広がっているのです。
一方、ブランドの認知向上のためにSNSのフォロー&リツイートキャンペーンのような施策を行うのは筋が悪いでしょう。
景品目当てのフォロワーに、意向度の高い顧客層はほぼ含まれませんし、「選ばれる理由を刻む」という文脈からもずれてしまいます。
そのため、同じ予算を使うなら、既存顧客からの紹介のほうがはるかに質の高い接点を作れるでしょう。
ブランド力は、一人の顧客に選ばれる理由の積み重ねで作られる
SEO・LLMOで成果を出すためのブランド力とは、単に知名度が高いことではありません。
顧客が自社と競合サービスを比較する中で、「この会社なら信頼できる」「このサービス(or商品)を選びたい」と思える理由があることです。
そのために取り組むべきなのは、「一人の顧客の中に、選ばれる理由を作る」ということに尽きます。
そこで最も重要なのが顧客理解です。
自社への意向度が高い顧客層を正しく捉えた上で、ブランドのイメージや、広告・オウンドメディアなどの施策を、「顧客の頭の中に残るかどうか」「最終的に自社を選ぶ理由になるか」という観点で設計していきます。
市場全体のキーワードで接点を作るだけでなく、最終的には「この会社について詳しく知りたい」と自社名で検索される状態を作りましょう。
顧客の頭の中に「自社のサービス(or商品)を選ぶ理由」を刻む――その積み重ねが、指名検索の向上につながり、SEO・LLMOで“勝てる”ブランド力につながっていくと考えています。
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