土居 健太郎と申します。
この業界の大ベテランである住太陽さん(自分がSEOを知った2009年頃には既にレジェンドであった方)の新刊、『AIで集客する仕組み 〜クリックされない時代に選ばれるAI検索のセオリー〜』を献本いただきましたので、だいぶ遅ればせながら書評を書いておきます。
AIで集客する仕組み ~クリックされない時代に選ばれるAI検索のセオリー~(Amazon)
これを言うとあちこちから怒られそうなのでここだけの話にしていただきたいのですが、自分の書いた本以外でSEOの本をちゃんと一冊読んだのは渡辺隆広さんの『ガンガンヒットするSEO』以来な気がするので実に15年以上ぶり?でしょうか。他の人がSEOを解説しているのをしっかり読むのが普通に新鮮で面白かったです。
目次
珍しい縦書きの本
内容関係ないですが、最初に驚いたのが、この本「縦書き」なんですね。この手のテーマで縦書きの書籍ってほとんど前例がないのでは。敢えて技術書っぽくなくビジネス本として読ませる工夫なんだろうなと想像してますが、面白いなと思いました。

「これは良い」と思ったところ
書籍自体はページ数もそこまで多くなく、1.5時間くらいあれば十分読めるボリュームです。
中身について、あまりネタバレにならないようにポイントだけまとめておきます。
もちろん終始平易な言葉で書かれていて読みやすいとか、小手先のテクニックに頼らず、本質的なところに話を絞っている。みたいなことも当然そうなんですが、特に、
- 「自社だからこそできるマーケティングをしっかりやる」(独自の取り組みやこだわりをPRする、SNS投稿や事例を充実させる、クチコミやレビューを増やす、等)の地続きにSEOやAI検索の話が置かれていること
- 中小零細企業やローカルビジネスに特化していて、専門の担当者がいない現場でも、大きなお金や時間をかけずに現実的に続けられることに絞ってあること
- 専門書ではなくビジネス書として、専門外の人でも読めるよう用語選びや言い回しが徹底して工夫されていること(おかげで読者が妙なテクニックに寄り付かずに済むはず)
このあたりが非常に良いと思いました。
敢えて「SEO本」ではなく「集客本」と言う
タイトルにも帯にもAIとは書いてありますが、これはSEOやAI検索対策のテクニック集ではなく、中小企業・個人事業主、特にローカルビジネスを営む人に強くおすすめできる「集客本」だと捉えています。
本書の流れは「どうやれば検索やAIからのアクセスが増えるか」ではなく、「マーケティングをしっかりやっていくと、検索エンジンやAIを通じてあなたのサイトやビジネスを知ってくれる人が増えます」という順番で組み立てられています。
特に最近のSEOやLLMOの文脈ではこの順番が大事で、帯のメッセージにもある「普段の取り組みの延長線上にある」も、まさにそういうことだと思います。
なので、「どうせ効果につながらない余計なことをあれこれやるくらいなら、本当に意味のあることを腰を据えてしっかりやろう」というスタンスで読める方にはおすすめで、今すぐ何かに効くテクニック集みたいなものを期待している人にはそこまでおすすめしません。
中小・ローカルにとって、従来型SEOはクソゲー
ここからは少し自分の持論じみたものを交えながら本書と関係ありそうなことをツラツラと。
大手と資本力で殴り合えない中小企業や、大手が広域展開しているなかで地域密着でやっているローカル事業者にとって、昔ながらの「検索数の多いメジャーキーワードやCV直結の激戦キーワードで上位を狙う」「関連キーワードで面を取りにいく」みたいな発想でSEOをやるのは、勝率ほぼ0のクソゲー化しています。
にもかかわらず、世の中の一般的なSEO情報解説は、こういう層をターゲットにしていないことがほとんどです。サイトの実装方法、検索アルゴリズムの解説、キーワードやコンテンツの作り方、専門性や独自性が大事、リンクは変わらず重要、といった一般論が中心になります。共通して言えることは結構限られてくるので自然とこのあたりに収斂してくるのも当然といえば当然です。
しかしこうした方法論は「既にあるブランドやデジタル資産を検索流入に効率よく転換するまぁまぁ普遍的なやり方」であり、それが効果をもたらすのは、
- 既にこれまでの活動からある程度以上のデジタル資産を持っている
- すでに社会的に広いブランド認知が形成されている
- 新たなデジタル資産の蓄積のために大きな資本投下ができる
などの条件を満たす企業に限られ(大手企業やネット系企業が中心)、これらに該当しない中小企業や地域密着ビジネスに同じやり方を当てはめても徒労に終わります。
その意味で「(昔ながらの)SEOは死んだ」と言うのであれば、それは正しいです。
検索経由の集客は諦めるべきなのか?
じゃあ中小企業やローカルビジネスはSEOやAI対策を諦めろ、というのかという話になりますが、結論から言うと全くそんなことはありません。
正攻法は「ちゃんと見込みのある潜在顧客にアプローチする活動をする」+「その証跡をデジタル空間に残していく」です。今回紹介している「AIで集客する仕組み」のテーマもまさにこれを中心にした内容だと思います。
具体的な施策や事例は省きますが、紹介されていたおおよその考え方(だいぶ意訳)は
- SNSやGoogleビジネスプロフィールのように、無料・低コストで使えるツールやプラットフォームを、情報提供・コミュニケーションの場として積極的に使う
- オフラインの接客や営業でやることを、ネット上でもやる
- 実際の集客につながりそうな情報、つまり見込み客が求めていたり、注文の後押しになりそうな情報を、ネット上に増やしていく
- 規模や範囲が小さくてもいいから、特定の領域・地域の中での「自社ブランド」を作っていく
のようなものでした。
少なくともこの発想でプランを組み立てれば、自社の商圏・強み・「あなたから買う理由」のどれにもつながらない「○○とは?○○や○○を解説!」みたいな記事を大量生産しよう、なんて選択肢は出てこないはずです。10年前や5年前ならまた違ったかもしれませんが、今はほとんど役に立たない。そんなことに時間とお金を使うなら、チラシを配ったりDMを送ったりしたほうが遥かに有効です。
それはSEO関係なく普通にマーケティングをやれってことしか言ってないではないか
こう言うと「わかるけど、つまりそれはSEOでもAI検索対策でもなくて、ほとんどが普通のマーケティングをやれって話じゃないか」と返ってきそうですが、そういうことです。それで合っています。
もちろん、先ほども書いたとおり、「デジタル上にしっかり証跡を残していくこと」は意識する必要があります。どこまで技術が発達しても、デジタル上にほとんど何の情報も存在しないサイトやブランドをユーザーに推薦することはGoogleもAIもできません。
では、なぜいま改めて当たり前のことを頑張れというのか?というと、プラットフォームの評価性能が「発展途上のアルゴリズムに最適化された情報ばかりを拾って提案してしまう」というレベルから、「ユーザーが求めているものがありそうな情報を拾って提案する」にどんどん近づいているためです。
言いかえれば、かつてはアルゴリズム志向のプレイヤーが得られていた機会が減り、ユーザー志向・顧客志向のプレイヤーにその分の機会が移行していっている、ということです。
ですので、「本来の顧客志向のマーケティング活動をやり、その結果やプロセスをデジタル空間に蓄積していく」ことで検索プラットフォームに情報が拾われる機会が増えやすくなっていますし、さらにAI検索やローカル検索、画像・動画検索といったさまざまな検索オプションが充実してきている分、今までより頑張り甲斐があることも増えているのです。
SEOもLLMOも、自社サイトだけで完結しない
ここも本書を読んだ上での肝だと思っているので補足を。
SEOもLLMOも、自社のホームページの中だけで完結する取り組みではありません。ブログメディアやSNSや動画サイト、ニュースサイト、口コミサイトや掲示板、なども含めて「デジタル空間全体」の評判や実績に基づいて、提示されるコンテンツの候補が決まっているわけです。
だからかつてのように「ホームページをどう作れば検索にヒットするか」ではなく、
- 今までやってきたことや今やっていることを、デジタル上で有効に表現していくにはどんな工夫ができるか
- 今やっていることの他に、デジタル上の資産を有効に増やしていけるマーケティング施策はないか
のような方向に考え方をシフトできると、打ち手の選択肢がぐっと広がります。
本書で語られている「自社サイトの重要性が下がったのではなく、役割が変わった(AIに誘導された見込み客が「答え合わせ」をして、問い合わせ・購入の決め手にする場所になった)」という整理も、この文脈で読むととても腑に落ちます。
検索からのアクセスを増やすためにうちのサイトですぐできることはないか?という課題から入ると、「費用対効果の合いそうな施策はほとんどないですね」と一気に手詰まりになります。でも、「我々のやってるビジネスやマーケティング活動の中で、何か工夫したらSEOやLLMOに繋げられることってない?」と言われると一気にアイデアが出てきます。
検索流入のためにサイトの中で特別な何かをする、という発想から抜けて、ぜひ継続的な資産になる活動に注力されると良いと思います。
体重100キログラムの人はランニングしないほうがいい
レビューなので批判的なことも一応書いておくか、と思ったのですが、強いてなにか苦言を呈するならば、本書に「体重100キログラムで毎日走る人におすすめのランニングシューズは?」というAIチャット検索の例が出てきた件について、体重100キロある人が毎日走ったら高確率で膝がイカれるので、ランニングシューズを探させるべきではないと思います(クソリプです)。
余談:僕の本と編集者さんが被ってました
完全に余談で、この本、自分が出した本と同じ出版社・同じ編集者さんが担当されてまして、それを知ったのが校了終えた4月だったので「え、それもっと早く言って?」と思ったのですが、実際に読んでみると、想定読者の知識レベルとテーマはそこそこ近いでしょうし、共通する論点も多かったので、予め知ってたら書きづらくなっただろうと思いました。
とはいえ主な読者ターゲットが異なるのと伝え方のアプローチが全く違うので、競合する本というよりは補完関係にある感じがしており、セットで読んでもらえると、むしろ説得力が増すんじゃないかと思っています。
拙著:10年つかえるSEOの基本【改訂新版】(Amazon)
※住さんからもご紹介いただいています
まとめ
新しいトレンドや難しそうな略語に振り回されて何か特別なことをしないといけないのかと焦っている人ほど、一回落ち着いて読むのに最適な本だと思います。
中身は地味な内容かもしれませんが、地に足のついた説得力があります。流行りに乗りたい人には向きませんが、腰を据えて集客の土台を組み直したい中小・個人・ローカルの事業者にこそ読んでほしい一冊です。
最後まで読んでいただいて本当にそうだよなーと思った方、是非(僕が書いた書籍と合わせて)購入して読んでみて下さい。
関連リンク
AIで集客する仕組み ~クリックされない時代に選ばれるAI検索のセオリー~(Amazon)
中小企業のためのSEO(検索エンジン最適化)実践ガイド 住太陽
10年つかえるSEOの基本【改訂新版】(Amazon)
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