生成AIによる要約「AI Overviews(AIによる概要)」がGoogle検索に導入され、検索体験は大きな転換期を迎えています。
この変化は、企業のWebマーケティングやSEOにも大きな影響を与えはじめています。
そこでここでは、企業のマーケティング担当者に実施したアンケート調査の結果をもとに、AI Overviewsに対する現状の捉え方や、実際に取っている対策、今後重視されるKPIの傾向などを紹介。
AI時代の検索との向き合い方を探る上で、企業がどのように動き始めているのかを整理します。
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目次
調査概要
- 調査期間:2025年6月17~18日
- 調査方法:インターネット調査
- 調査対象:企業のマーケティング従事者442名
※インターネットで検索をした際、その検索内容に対してAIが回答する機能「AI Overviews(AIによる概要)」についての質問であることをお伝えした上で回答いただいています。
AI Overviewsの登場で流入増・コンバージョン増──恩恵を受けた企業の共通点とは
AI Overviewsによる自社サイトの変化について質問したところ、その影響をすでに感じ取っている企業が多いことがわかりました。
中でも注目したいのは、「自社サイトのオーガニック流入が増加した」という回答が40.5%と最も多かった点です。
AI Overviewsの登場によって、自然検索結果の一覧から自分で選んでクリックする(いわゆる“青いリンク”のクリック)従来の検索行動とは異なり、ユーザーは「AIによる要約(つまりAI Overviews)」を起点に情報を得るケースが増えています。
AIの回答に自サイトのコンテンツが引用されることで、むしろクリックされる機会が増えた企業が多いと考えられます。
例えば、「自動車保険 おすすめ」で検索すると、AI Overviewにおすすめの企業が紹介されています。
それを見て、会社名で検索し、運営サイトへ流入している可能性もあるでしょう。
次に多かったのが「コンバージョン数(CV)が増加した」(30.3%)という回答。
これは、AI Overviews経由で流入したユーザーの検索意図が明確であること、もしくは信頼性をAIに担保された形で自サイトに訪れることが、成果につながっている可能性を示唆しています。
一方、「CVが減少した」(19.9%)、「ユーザー行動の変化が読み取りにくくなった」(19.5%)など、課題感を抱える企業も一定数存在しており、AI Overviewsの影響が一様ではないことも明らかになりました。
こうした結果から、AI Overviewsは企業にとって脅威というより、コンテンツの質や構造次第でチャンスにもなり得るといえるでしょう。
特に、FAQなど構造化データをマークアップしたり、一次情報を盛り込んだりなど、AIに拾われやすい情報設計が重要になってきています。
AI Overviewsの登場により、情報収集型の検索キーワード(例「SEOとは」)はWebサイトに訪問せずとも解決するケースが増えています。
こうして手間なく情報にアクセスできるようになったことで、ユーザーはより深く検索するようになっていると考えられます。
その結果、流入を獲得できたサイトが今回の調査では多かったのではないでしょうか。
AI Overviews対策、すでに半数以上の企業が対応中
AI Overviewsへの対策状況にまつわる問いでは、多くの企業がAI Overviewsへの対応をすでに視野に入れていることが明らかになりました。
最も多かった回答は「現在、対策を検討・準備中である」(37.3%)で、約4割の企業が対応に向けた動きを始めていることがわかります。
さらに、「すでに具体的な対策を実施している」(18.6%)も含めると、半数以上(55.9%)の企業が何らかの形でAI Overviewsへの対応を進めているようです。
一方で、「情報収集はしているが、まだ具体的な動きはない」(17.0%)、「対策はしていない」(12.9%)という層もあり、AI Overviewsを巡る対応は企業によって大きなばらつきがある状況。
この結果からは、AI Overviewsがマーケティング戦略に与える影響をリアルタイムで捉え、どう行動に移すかが、企業の情報発信力や集客力に直結し得る時代に突入していることを示唆しています。
今後は「待ち」の姿勢ではなく、少なくとも情報収集と社内共有を早期に行い、自社への影響を見極めた上で施策に落とし込むスピードが問われるでしょう。
日々発展しているAIによって、ユーザーの検索行動が変化していることを各社が肌で感じているからこその動きでしょう。
毎月のように新しい技術が生まれる時代なので、これまで以上にアンテナを張って情報取集していく必要があります。
AI Overviews対策は「信頼性×独自性×構造化」の強化が鍵に
すでにAI Overviews対策を実施している、もしくは準備中の企業に対して、具体的な施策を聞いたところ、最も多かったのは「ファクトチェックや専門家の記事監修など信頼性の強化」(52.2%)、次いで「独自データ・一次情報を用いたコンテンツ制作」(50.9%)という結果でした。
いずれも生成AIに“引用されやすくなる”ことを意識した代表的な取り組みであり、AI Overviewsが参照する信頼性の高い情報源として選ばれるための工夫が進んでいると考えられます。
これらの施策は、従来のSEOにおいても重要とされてきたE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)を強化する取り組みと重なります。
つまり、AI Overviewsの台頭により、SEOにおける本質的な施策――ユーザーに信頼される独自性のある情報の発信が、より強く求められるようになったといえるでしょう。
また、「構造化データの整備」(32.0%)や「FAQ・要約文の対応」(22.0%)といったAIが理解しやすい情報設計を意識した技術的な対策も進んでおり、SEOとAI Overviews対策が本質的に地続きであることがよく表れた結果となっています。
今後は、単に検索上位を狙うのではなく、「AIに正確に取り上げられる」ことを念頭に置いたSEO戦略が重要になっていくといえそうです。
AI Overviews対策でも、情報の信頼性や独自性が重視されるのは変わらないため、E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)を強化する取り組みはこれまで以上に重要となるでしょう。
加えて、AIに取り上げられるためには、Web上に自社サービスの情報を豊富に掲載することも重要です。
ユーザーの声、事例紹介の拡充などを通して、自社サービスの情報を増やせるとベスト。
AI Overviewsの登場で存在感が増す「指名検索」の重要性
AI Overviewsの浸透によって、今後どのような指標を重視するようになるかについては、「指名検索数を重視する」と答えた企業が41.4%と、最も多い結果となりました。
AI Overviewsの登場によって、検索結果の上部に要約が表示されるようになったことで、ユーザーが従来のように複数のリンクを見比べる機会が減少しているようです。
その結果、一般的なキーワードでの比較・検討による流入は得にくくなったため、代わりに特定の企業やサービスを目がけて検索する指名検索(AI Overviewsに表示されるかどうかに左右されにくく、確実に自サイトにたどり着く可能性が高い)がより重要視されるようになっています。
こうした動きから、指名検索数をKPIとして重視することになると考える企業の増加は自然な流れといえるでしょう。
次いで多かったのは「クリック率(CTR)」(34.6%)と「コンバージョン数・率」(32.4%)で、成果指標やエンゲージメント指標も引き続き重視されていることがわかります。
AI Overviewsが検索体験を変えつつある中でも、ユーザーの意思決定をどう成果につなげるかは引き続き重要なテーマです。
一方、「AI Overviewsにおける自サイトの引用数」は9.3%と低い結果に。これは、現状は成果の可視化や計測が難しいことが課題と考えられます。
今後、AI Overviewsを経由したクリック数や流入数が計測できるツールの開発が進めば、新たなKPIとして定着する可能性もあるでしょう。
AI検索が浸透すると、サービスの比較・検討は生成AIとの対話を通じて行い、選定したWebサイトへ訪問するために指名検索するという流れが増加すると考えられます。
そのため、指名検索数をKPIとして重視するのは自然な流れでしょう。
一方、指名検索はAI検索で選ばれた結果ともいえるので、自社が生成AIからどのように引用されているのかを継続的に観測することが望ましいです。
AIに拾われることを目指す技術・コンテンツへの投資が加速
AI Overviewsによって、施策のリソース分配に変化があるかについての問いでは、「構造化データ/テクニカルSEOへの投資を増やす」(41.6%)、「AI Overviews向けの専用コンテンツ・実装対応を進める」(38.5%)という回答が上位となりました。
いずれも、AI Overviewsで自社情報が適切に取り上げられるようにするための施策であり、これまでの設問でも示されてきたとおり、AIに目配せした設計・実装への関心が高まっていることが読み取れます。
また、「SEOコンテンツ制作への投資を増やす」(25.6%)や「検索広告(PPC)の予算を増やす」(22.9%)といった既存施策の強化も目立ち、AI Overviewsを意識しながらも、従来のチャネルの強化をはかる企業も少なくありません。
この結果からは、AI Overviewsによって検索環境が変化する中で、既存の取り組みにAI対応をどう組み込むかが、今後のマーケティング戦略における重要な判断軸になっていることが見て取れます。
AI Overviewsや生成AIに自社情報を引用してもらうためには、まずは情報を取得しやすいサイト構造にすることが重要です。
昨今では、Googleのクローラーが高性能であることから、テクニカルSEOの実施優先度が下がり気味になっていましたが、AI検索の台頭でChatGPTやPerplexityなどGoogle以外も意識する必要が出てきています。
改めて、自サイト内部の状態を見直す良いタイミングといえるでしょう。
AI Overviewsの影響で本質に立ち返る?有益な情報提供への再注目
今回の調査結果からは、AI Overviewsの登場により、構造化データの整備や独自性・信頼性を重視したコンテンツ制作など、テクニカル・コンテンツ両面での対応を進める企業が増えていることがわかりました。
ただし、こうした取り組みの多くは、元々SEOにおいて推奨されてきたものであり、検索エンジンが本来求めていた“ユーザーにとって本当に有益な情報”の重要性が改めて意識されるようになったともいえます。
AIが従来の検索行動を変えたといわれている今、むしろSEOの本質にWebマーケティング従事者の多くが立ち返りつつあるのだとすれば、この変化はポジティブなものになるでしょう。
なお、ナイルではAI Overviewsや生成AIからのユーザー流入の増加から、流入後のコンバージョン率の向上までを支援するLLMOコンサルティングを行っております。
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