マーケティング担当者ならば「マルケト」と呼ばれる製品の名前をよく聞くのではないでしょうか。

アドビ株式会社のMA(マーケティングオートメーション)ツールである「Adobe Marketo Engage」(通称「マルケト」)では、日本語サイトにおけるSEO施策に取り組み、安定したリード獲得につなげています。

「Adobe Marketo Engage」はグローバル展開をしており、サイトフォーマットは各国で共通のものを使用しています。そのため、日本個別の変更が難しいなどさまざまな制約がありました。
外資ITならではの制約のなか、どのようにSEO施策を進めたのでしょうか。アドビ株式会社でマーケティングスペシャリストを務める虻川稜太氏と、ナイルの遠山直人に話を聞きました。

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SEOで直面した、外資ITならではの「制約」

——まずは、Adobe Marketo Engageという製品と虻川さまの役割について教えていただけますでしょうか。

アドビ株式会社 虻川稜太氏(以下、虻川)顧客1人ひとりにあわせた体験を設計し、顧客体験の自動化によってカスタマージャーニーのスムーズな進行を支援する「マーケティングオートメーション(MA)」と呼ばれるジャンルの製品で、Adobe Experience Cloudというソリューション群のうちの1つです。国内海外合わせ、20社以上の競合が存在するのですが、その中でも「Adobe Marketo Engage」はハイエンドの位置づけになります。

私はAdobe Experience Cloudのマーケティングを担当するDXマーケティング本部に属しており、マーケティングスペシャリストとして、「Adobe Marketo Engage」をメインに担当しています。もともとは株式会社マルケトでインサイドセールスを担当しており、2019年のアドビとの統合を経て、現在に至っています。

 

——ナイルにSEOコンサルティングのご依頼をいただいたのが、2020年6月のことでした。なぜSEOやコンテンツ制作に取り組もうと考えられたのでしょうか?

虻川「Adobe Marketo Engage」の受注金額をリードソース毎に見たときに、SEOが安定して高い水準にあったことが主な理由です。「Adobe Marketo Engage」は法人向けのアプリケーションなので、スポンサーイベントや展示会といったオフラインチャネルで獲得したリードの商談から受注することも多いのですが、成果が見込めるイベントが常に開催されるわけでもないのでリード獲得の空白期間が生まれますし、出展したイベント毎に成果も変動します。その中でコロナ禍の影響も受けました。デジタル広告への投資の強化も考えましたが、直近の成果をチャネル毎に比較した結果、SEOのキーワードを強化してオーガニックで流入を増やす方が費用対効果も見込め、かつ継続的な成果が出せると考えました。

——「Adobe Marketo Engage」のサイトは、英語サイトをローカライズしている部分もあり、SEOにあたっては制約も多いのではないでしょうか。

虻川そうですね。アドビはAdobe Creative Cloudなど、多くの方にご愛用いただいているツールを扱っていることもあり、世界観を守ることを大事にしています。サイトフォーマットやメッセージの打ち出し方もあらかじめ決まっているんです。テクノロジー周りも本社が管理しているので、なかなか柔軟にはいかないんです。

ナイル株式会社 遠山直人(以下、遠山)メッセージングで言えば、製品名はカタカナではなくアルファベット表記に統一するなど、細かいところまで決まっていました。初期のころは、ヘッダメニューの文言を変えたり、形式はそのままで言い方を変えたり、許された範囲のなかで何が出来るかを模索していましたね。

虻川他の制約としては、アドビの全てのサイトのテクノロジーはブランド保持や技術的な観点でのコントロールのために本国にて管理されており、現地法人判断で独自のテクノロジーのタグを埋め込むことが難しい状況があります。タグ以外にも、ベンダーやテクノロジーの管理もグローバルからのチェックが入るので、柔軟に良いものはなんでも採用する、ということには制限がありました。現場の判断で新しいことを進めるにあたっては、グローバルのチームと英語で交渉せねばならないので、その工数も考慮する必要がありました。

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優先順位を見極めながら、100を超えるアイデアを実施

——外資系ITならではの制約が多いなかで、ナイルからはどのような施策を提案したのでしょうか。

虻川ビッグキーワードでの順位獲得をメインにした記事の制作や、検索エンジンがクロール・インデックスしやすいように検索に引っかかるようなページの分解、ページ内の回遊率を高めるようなリンク設置の追加など、通算で100を超えるアイデアを出していただきました。最初の3か月でサイト分析、競合キーワード分析をしっかりしてもらっていたので、改善点も明確になっていたのではないかと思います。

遠山印象に残っている施策は、「MA」で検索上位を取ったことですね。それまでタイトルに「マーケティングオートメーション」と、カタカナが表記されていたことが多かったんです。これをアルファベット表記の「MA」に変えましょう、とお話しました。カタカナ表記より「MA」のほうが、5倍近く検索ボリュームが高いので、インパクトとしては一番大きかったはずです。

※7/28時点で「MA」の自然検索結果で1位に。

 

虻川導入事例の絞り込みを、ページ単位に分解したのも大きかったですね。もともと、導入事例を「課題」や「業種」ごとに絞り込めるようにしていたんですが、URLがずっと同じままだったんです。これを分割して、それぞれのキーワードで検索にかかるようにしましょうと。提案を受けて実際に分けてみると、検索順位が軒並み向上しました。SEOでのリード獲得数は約150%、SEO経由の商談件数も130%ほどと向上しています。「SEOのプロ」からさまざまなアイデアをいただいた結果ですね。

 

——「通算で100を超えるアイデアがあった」とのことですが、どのように優先順位をつけて着手したのでしょうか。

虻川インパクトがあり、なおかつ制約に引っかからないもの、実装の難易度が低いものを優先的に着手するようにしています。ナイルさんからも施策ごとに優先度を出してもらえたので、「優先度高のうちどれをやるか」と考えていました。

遠山先ほどの導入事例の絞り込みなど、一見工数がかかりそうなものも直ぐに反映されていましたよね。提案がサッと実装されていたので、驚いた記憶があります。

虻川それはもう、Webサイトを開発されているベンダのおかげです(笑)。ベンダとは毎週ミーティングの場を設けて、Webサイト構築の観点からも意見をもらいながら、着手する施策を決めているんです。工数がかかりそうな依頼は早めに言っておいて、相手が忙しすぎない時期に実装してもらうなど、進行には気を配っていますね。

 

——普段から良好な関係を築けるよう意識されているわけですね。

虻川あとは、ナイルさんから出る資料がわかりやすいのも助かっています。そのままベンダに渡しても理解してくれるほど、噛み砕いた資料を用意してもらえるので。

遠山ありがとうございます。私はもともと制作サイドにいたので、作る側の気持ちが分かるのもあるかもしれませんね。

 

——難しかったところ、苦労されたところも伺えますか。

遠山周辺のキーワードでしょうか。「MA」など、メインのキーワードはパッと出るのですが、その周辺はサービス自体を理解しないとなかなか出てこなくて。最初の3ヶ月は、虻川さんにもだいぶ相談したと思います。

虻川私はシステム周りの調整には苦労しました。システムは基本的にグローバルの管理なので、ナイルさんがヒートマップやアクセス解析などを使えるようにするためには、各方面に調整をしなければいけません。私自身がアドビに来て日が浅いこともあり、そもそも誰が担当者なのか探すところから始めたこともありましたね。

「ただの解説では終わらない」専門チームによるコンテンツ制作

——SEOに加え、ナイルではコンテンツ制作も担当しています。ナイルに記事制作を任せた決め手は、どこにあったのでしょうか。

虻川他社を検討した際、コンテンツ制作については社内に制作チームがなく、クラウドソーシングで対応すると提案を受けました。対して、ナイルさんは社内でクオリティ管理をされていると聞き、安心できると思えたんです。

実際、お願いした当初は、内容の正確性についてかなり細かく指示をしていましたが、最近はその回数も減ってきました。「Adobe Marketo Engage」は競合製品と比較しても様々な使い方ができる柔軟性の高いアプリケーションなので、提供できる価値や機能を余すところなく伝えたいと考えています。分かりやすい機能だけでなく、使い込むことで初めてわかるメリットや、顧客視点のマーケティングに本気で取り組む上で欠かせない観点なども盛り込みたい。そうした意図も汲んでもらえて助かっています。

遠山ライター向けの記事要件を作るときは、「Adobe Marketo Engage」の優位性や伝えたいことが明確になるように、情報を整理するよう心がけています。ただの解説で終わってはもったいないですから。

虻川最近は、ビックキーワードから専門性の高い記事へと徐々に移行しているので、難易度が上がっているはずなんです。それでも一定のクオリティを保たれていますし、検索順位も順調に上がっている。専門チームを社内に持つ良さが出ていると思いますね。

 

——Adobe Analyticsによる分析レポート作成も、ナイルにお任せいただいています。

虻川実は当初、ナイルさんがAdobe Analyticsを扱えることを知らなかったんです。社内でレポート作成までなかなか手が回らなかったので、お願いしてみたら「なんでもいけますよ」という感じで。「いけるんだ……」と思いましたね(笑)。

分析レポートでは、月ごとの大きなトレンドで全体像を把握するようにしています。トレンドに崩れがないか確認し、崩れがあったとき細かく見るイメージです。ナイルさんには小回りが効くレポートを出してもらえていますし、「最近ここからのコンバージョンが減っているんですが」と相談すればすぐ入ってもらえますので、話が早いですね。

 

——ありがとうございます。最後に、商談数を増やすために、普段から虻川さんが意識されていることがあれば教えてください。

虻川検索流入は最も大事なチャネルのひとつですが、チャネルごとの最適化も大切です。デジタル広告やスポンサーイベント、ウェビナーをはじめ、リード獲得後のナーチャリングや、インサイドセールスが動きやすいような仕組みの整備といった施策が必要になります。

これらの施策に取り組む際のベンチマークとなるのが、MAとSFAによるデータ群です。何が受注に貢献したのか、どのチャネルの流入がどれくらいコンバージョンしているのか、データを元に見通しを立てながら、お客様のカスタマージャーニーに合わせた施策を考えています。社内に検討材料が揃っているのは、MAベンダならではの強みかもしれませんね。

 


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この案件・類似案件を担当したメンバー

 遠山 直人

遠山 直人(とおやま なおと)

Webディレクターとしてサイトリニューアルから、CMS導入、コンテンツ企画まで、幅広いプロジェクトを担当した実績多数あり。SEOコンサルティングを中心とした改善提案に従事。Webデザイナーの経歴を活かしたビジュアル改善、UI/UX改善も得意とする。

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