強みを伸ばせば後発でも業界のリーダーに成長できるーベイジ枌谷氏に聞く強みの見つけ方、育て方

強みを伸ばせば後発でも業界のリーダーに成長できるーベイジ枌谷氏に聞く強みの見つけ方、育て方

前回はナイルの顧問である株式会社ベイジ・枌谷力氏に、情報発信の極意を教えていただきました。

今回は情報発信を含む日頃のマーケティング活動などにおいて、鍵となる自分たちの強みを明確にする方法をお伺いします。

この記事の内容

  • 自社の強みを伸ばし続ける「強みをつくるトライアングル」とは何か?
  • 後発でも業界のリーダーになる方法は、異分野との組み合わせ。事業成長につながる「異分野」を見つける3つの考え方

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「強み」は自然に生まれるものではなく、意図的に作り出すもの

――前回、企業の情報発信において、根底に流れるメッセージの大切さをうかがいました。

 

ただ、これから情報発信に取り組まれる企業のなかには、自分たちが打ち出すべきメッセージや、自社の強みをどう見つけたらいいのか、悩まれる場合もあると思います。ベイジさんは「BtoBに強い制作会社」という強みをどのように見つけられたのでしょうか。

枌谷さん:まず大前提として、強みは自然に生まれるものではなく、意図的に作り出さなければいけないもの、と考えています。「BtoBに強い」というベイジの強みも、かなりマーケティング的に作ってきたと自分では思ってるんですね。

 

――そうなんですね。強みはすでにあるものを伸ばしていくものだと思っていました。どのようなステップで強みを作り上げてきたのでしょうか。

枌谷さん:私は「学習」「交流」「発信」という3つの活動を回すことで、強みが作られると考えています。

強みを作るトライアングル

 

枌谷さん:これが強みになるかもしれないと決めたら、まずその分野について「学習」する必要がありますよね。本を読んだり、イベントに参加したりして、インプットをする。その成果をアウトプットするために、SNSやブログなどで「発信」します。発信することで反応があり、SNSのフォロワーや同じ業界の人などとの「交流」が生まれるでしょう。

 

交流によって新たな学びがあり、さらに勉強を重ね、その成果を発信して……と、3つのサイクルを回し続けることで、それぞれの活動に厚みが増し、強みが作られると思っています。

 

――なるほど。学習、発信、交流のサイクルを意識して動けば、情報発信を続けるモチベーションも保てそうですね。

株式会社ベイジ 枌谷さん01

枌谷さん:そうですね。そしてこのトライアングルの中で、強み作りの重要なエンジンになりえるのは、「交流」ではないかと思っています。交流によってリアクションがあれば、また情報発信しよう、ブログを書こうという気持ちになりますから。SNSの反応はもちろん、お客さんや社内から「あのブログ読んだよ」と実際に声をかけられるのも嬉しいですよね。「コンテンツを作ったことで交流が生まれている」と実感するのが、モチベーション高く学習や発信を続ける秘訣ではないでしょうか。

――交流が生まれると楽しくなるのは、Twitter道場でも実感しています。楽しいからこそ学習・発信を継続できますね。

※Twitter道場…枌谷氏が道場長を務めるナイル社員が個人のTwitterアカウントで情報発信をする取り組み。

 

「サブカテゴリ」でのリーダーを目指す

――先ほどの「強みを作るトライアングル」のサイクルでは、まず自分の思う強みについて「学習」する必要がありました。では、学習対象となる「自分の思う強み」自体は、どのように決めていったらよいのでしょうか。

枌谷さん:私なりにいくつか心がけていることがあるのですが、「流行の後追いをしない」は結構大事だと思っています。例えば有名なプロダクトライフサイクル理論を引用すると、導入期から成長期、成熟期とプロダクトが盛り上がり、飽和期を経て衰退期に至る、という一連の流れがあります。

 

プロダクトライフサイクル理論

 

枌谷さん:この図の各項目は、発表用に適当に作ったものなのであまり真剣に捉えてほしくないのですが、既に市場に浸透し、飽和期以降の市場の中で強みを作ろうとすると、強い競合も既におり、そのような中でゼロから強みを作っていくのは一筋縄ではいきませんよね。経済的に体力がない企業だと特に難しい。そういう意味で、安易な流行の後追いは避けるべきと考えています。

と考えると、導入期にある市場で戦うのが一番競争が少なく楽に思えるのですが、その市場自体が成長軌道に乗らずに終焉してしまう可能性もあります。そのため、成長期にある市場に目を付けて、その中で強みを磨いていくのが、理論上は一番リスクも少なく美味しいように思います。ただ、自分のやりたいことがあって、それが既に成長期を超えていることもありますよね。

 

――はい、ナイルが得意とするSEOも飽和期に入りますね。

枌谷さん:そうですね。ベイジが得意とするウェブ制作も飽和期にありました。では、成長期を越えた市場で強みを作るはどうすればいいか。これに関しては、ブランドの大家、デービッド・A・アーカー教授の著書『カテゴリー・イノベーション』の影響を多分に受けているのですが、成長期を超えた市場で戦う時は、「サブカテゴリ」を作って、その中のリーダーを目指せばいいのだと思います。

 

 カテゴリの考え方

 

枌谷さん:私たちで言えば、既に飽和した「ウェブ制作」というメインカテゴリでは、ベイジはフォロワーに位置していると言わざるをえません。そこで「BtoB」というサブカテゴリを作り、「BtoB」×「ウェブ制作」という掛け合わせでリーダーとなることを目指しました。

 

――要素を掛け合わせることで、あえて狭い範囲でのリーダーになる……ということですね。ただ、ニッチな市場を目指すと、それだけ仕事が限定されてしまう怖さも感じます。

枌谷さん:わかります。ベイジが「BtoBが強みです」と前面に打ち出したのも、実は昨年のことなんですよ。

 

――そうだったんですか!ずっと言われているイメージがありました。

枌谷さん:BtoB分野のウェブ制作については、2012年から力を入れてきたので、長い間サービスメニューとして持ってはいたんです。登壇やSNSなどでも、「BtoBに強い」というのはずっと言い続けてきました。

それでも自社サイトのタグラインにそこまで明確に「BtoB専門」と書かなかったのは、言い切ることで顧客が減ってしまうのではないか、という怖さがあったからです。ただ、年を経るごとにBtoBの問合せ数が増えてきたことを踏まえて、昨年ようやくコーポレートサイトのトップに「我々はBtoBに強い制作会社です」とはっきり言うようにしたんです。

 

株式会社ベイジ 枌谷さん

BtoBに舵を切った結果、さらに問合せ数が増えているので、判断は間違ってなかったと思います。問合せ数の増減は複雑な要因で決まるものなので、このタグライン変更のおかげで問合せが増えたとは断言できませんが、対象を絞り込むことを過剰に恐れる必要はないんじゃないかな、とはこの件で思いました。

とは言え、狭すぎるサブカテゴリだと本当に集客に問題が生じることもあると思うので、サブカテゴリは安易に決めるのではなく、状況の推移も観察しながら、戦略的に、慎重に決める必要はあるでしょうね。

――ぜひ、問い合わせが増えるようなサブカテゴリの切り方を知りたいです!

 

自分の得意分野と掛け合わせる「異分野」の見つけ方

――ではベイジさんは、どのようにしてサブカテゴリを「BtoB」に決めたのでしょうか。

枌谷さん:我々がやりたい「ウェブ制作」は飽和期にありますので、ウェブとは別の分野を掛け合わせることを考えました。掛け合わせる分野には条件があります。「重なる領域の市場規模が大きい」「重なる領域に競合がいない・少ない」、そして「自分が得意もしくは関心がある」の3つです。

 

異分野との掛け合わせ その1

 

枌谷さん:この3つを満たす異分野こそが、自分の強みを作るサブカテゴリになります。「BtoB」は、まさにこの条件を満たすものでした。

 

異分野との掛け合わせ その2

 

枌谷さん:「BtoB」の市場規模はとてつもなく大きいんですが、BtoBの得意なウェブ制作会社というのが、目を付けた当時はほぼゼロで、今も明言している会社は1~2社しかいない状況です。加えて、私自身BtoBの仕事が大好きで、熱意を持って取り組めている。ベイジにとって最高のサブカテゴリと言えます。

 

――逆に、この3つの条件が当てはまらない例には、どのようなものが考えられるでしょうか。

枌谷さん:例えば「音楽」を異分野として掛け合わせてみましょうか。私は音楽が好きなので、「自分が得意もしくは関心がある」という条件は満たせるのですが……。

 

異分野との掛け合わせ その3

 

枌谷さん:音楽自体の市場規模は大きく、ソーシャルメディアやウェブ広告への投資は活発なものの、経験則的に、ウェブ制作への投資は多く見込めないと考えました。重なる領域の市場規模が小さいので、サブカテゴリとしては適切ではないと判断できます。

 

異分野との掛け合わせ その4

 

枌谷さん:こちらは「UXデザイン」を重ね合わせた図です。UXを扱うウェブ制作会社は多いので、重なる領域の競合が多すぎます。また、これも私見ですが、UXデザインの市場自体がそこまで大きなものではないと思うんです。そう考えると、「UX×ウェブ制作」にフォーカスして強みを磨くのも、得策ではないな、と。

 

――なるほど、他の例を見ると、ちょうどよいサブカテゴリを見つけるも簡単ではないことがわかりますね。逆に「BtoB」を見つけたことが奇跡のようにすら思えます。

枌谷さん:正直「いいもの見つけたな」という感じですね(笑) でも、他にもウェブ制作と相性の良い分野もあるんですよ。

 

異分野との掛け合わせ その5

 

枌谷さん:例えば「コンテンツ制作×ウェブ制作」。コンテンツ制作は市場規模も大きいですし、「コンテンツ制作に強いウェブ制作会社です」と名乗っている会社もあまり見かけない印象があります。もし、もう一つウェブ制作会社を作っていいと言われたら、間違いなくこの分野で作りますね。

 

異分野との掛け合わせ その6

 

枌谷さん:あと、ウェブ制作のサブカテゴリからは離れますが、最近ベイジで伸びている組み合わせが「業務システム(SaaS)×UIデザイン」ですね。市場規模が大きい割に競合がいないので、この組み合わせを見つけてから力を入れています。

「BtoB×ウェブ制作」も「業務システム(SaaS)×UIデザイン」も共通するのは、まず自分たちが強みを発揮できそうな市場な領域なりを見つける。それからトライアングルを使って強みを育てる。私の強みの作り方は、いつもこのパターンです。

 

――なるほど。見つけた強みは「市場規模」「競合の有無」「自分が得意もしくは関心がある」の視点で自社事業と相性を見極め、「強みをつくるトライアングル」で強みを伸ばし続けるのですね。引き続き「強みのトライアングル」をまわしながら、自社の強みを伸ばしていきます。本日はありがとうございました!

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編集者情報

金子 光
金子 光(かねこ ひかる)
新卒で楽天グループ株式会社に入社。
営業管理として40人規模のチームをマネジメント。その後社員3人のベンチャー企業に入社し新規事業立ち上げを経験。
現在はナイルのマーケティング相談室編集長として、Webマーケティングに従事している。
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監修者情報

ナイル編集部
ナイル編集部

2007年に創業し、約15年間で累計2,000社以上の会社にマーケティング支援を行う。また、会社としても様々な本を出版しており、業界へのノウハウ浸透に貢献している。(実績・事例はこちら

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